貝の火 貝の火
作: 宮沢 賢治 絵: おくはら ゆめ  出版社: 三起商行(ミキハウス) 三起商行(ミキハウス)の特集ページがあります!
親子のひばりは、沢山おじきをして申しました。 「これは貝の火という宝珠でございます。 王さまのお伝言ではあなた様のお手入れ次第で、この珠はどんなにでも立派になる
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「こわい」「かなしい」が感情をゆたかにする

───作者の坂元裕二さんは、『ウーギークックのこどもたち』絵本出版にあたって、なにかおっしゃっていましたか。

絵本出版にあたりメッセージをよせてくださいました。「幼い頃に感じる怖い、悲しいという思いがいつか大人になった時に豊かな感情となる。そんなことを思いながら作った物語です」と。

───「こわい」「かなしい」って、幼い頃は避けてとおってほしいと、親としては願うけれど・・・そういうわけにいかないときもありますよね。

ええ。たとえばささいなことですけど、私は小さい頃に犬に追いかけられたことがあって、いまでも初めての犬に対して構えてしまうところがあるんです(笑)。子どものときの「こわい」「かなしい」という感情はよく覚えていて、もう大人になったんだからのりこえたいのに、なかなかのりこえられないことはよくありますよね。
「うれしい」「たのしい」という感情はわかりやすいし周りの大人も、子どもが嬉しそうに楽しそうにしていたら喜びますよね。でも「こわい」「かなしい」は、子ども自身も周囲の大人も、押し込めてしまいがちです。
けれども「こわい」「かなしい」を乗り越えていくためには、そんな感情も否定せずに受け入れ、つきあっていかなければいけない。

───そうですね。東日本大震災後、考えてしまうテーマのひとつなんですが、震災に限らず家族の病気や事故、学校や日常のなかでも・・・子どもにとってちいさな事件はいっぱいありますよね。その「いざ」というときに「こわい」「かなしい」に子どもたちはどう対処するんだろう、対処できるんだろうか、と考えてしまいます。

そうですよね。たとえば現代社会では「死」に触れる機会もすごく減ってしまって、日常から隠されてしまっています。でも子どもにとって(しぬことは)「こわいんだ」「かなしいんだ」とちゃんと感じることって、すごく大事だと思うんです。
さまざまな感情をもつのが、人間です。だからこそ作者は「こわい」「かなしい」への思いを、絵本にこめたのではないでしょうか。

───親はどうしても心配してしまうんです。小学生になればひとりでお留守番することもあるし、あまりこわがらせたくないと思ってしまう。でも親が心配するより、子どもはたくましいかもしれませんね。

実は知人の4歳の男の子が『ウーギークックのこどもたち』を大好きなんです。「ウーギー!ウーギー!」と嬉しそうに絵本を手にニコニコしてくれて。あのまるくて真っ黒の姿形と一つ目をかわいいと思っているみたいで(笑)。
たしかにウーギークックって、何だかかわいいかも・・・(笑)。子どもは自由に好きなところを見つけてくれるんですよね。
ウーギークックをどうとらえるかは、子どもによってや年齢によってもぜんぜんちがうと思います。幼いころは深くうけとめず、ただ何となく心にひっかかる存在であっても、成長して肉親の死を身近に感じる機会には、書かれているテーマに気づいてじっくり読みたくなるかもしれません。もしかしたら、こわいと思うときもくるかもしれない。でも、ウーギークックは単なる怪物というより、「変化していくものの象徴」にも見えませんか。
るるとかかわることによって、ウーギークック自身が変化していく。まわりも変化していく。るるはウーギークックをただ恐れることはしなかったですよね。自分から必死にかかわっていった。子どもたちは作品からいろんなことを感じてくれるのではないでしょうか。

───ちょっぴりドラマ「Woman」の話になりますが(実は、磯崎も毎回楽しみに見ていました!)、困難がつづくドラマの物語の終盤、子役の女の子(鈴木梨央さん演じる「望海」)のいきいきした生命力で、世界じゅうに色がついていくみたいな場面がありますよね。女の子が走っていく、そのシーンを思い出すだけで涙がでそうになるのですけど・・・。
女の子はドラマのなかで、ママが病気で死んでいなくなったらどうしようとこわくなって、ママのあとをつけて病院にいくけれど、その病院に置いてある絵本『ウーギークックの子どもたち』を「こわいからイヤ」、とは思わない。きっと、不思議だけどこの絵本のことが好きなんですよね。

ええ。作者の坂元裕二さんがメッセージをよせてくださったように、「こわい」や「かなしい」の感情をうけとめて、向きあって・・・それが大人になったときにとても豊かな感情に育つんだと思うのです。
絵本のなかで、るるがウーギークックのところへいこうとしたら、ともだちみんながとめましたよね。だれもウーギークックに向きあおうとはしなかった。だけど、るるがでかけていって、ウーギークックにたべものをさしだし、話をする。そこへ100年に一度のカミナリがおちて・・・ウーギークックもるるの運命もかわります。
「こわい」「かなしい」という感情はかんたんにのりこえられる感情じゃないけれど、生きていく力にかえることができる。
感情にふたをするのではなく、感情をうけとめ生きていくことの大切さを、この絵本はおしえてくれるのではないかと思います。

───絵本の最後のほうに出てくる、ウーギークックの「こわいはおいしい。かなしいはおいしい」という言葉に、あぁ「こわい」「かなしい」にも色があるんだな、味があるんだな、と思いました。ウーギークックにたくさんのことを考えさせられた気がします。
きょうは、お話をきかせてくださって、ありがとうございました!




───『ウーギークックのこどもたち』は、もともと日本テレビ系ドラマ「Woman」のなかに小道具として登場した絵本だったのこと。どのような形で制作がはじまったのでしょうか?

最初、番組の方からご依頼の連絡をいただいた時には既にドラマ第1話がオンエアされていたんです。それで、絵本も、ドラマの中で子どもが持って歩く程度の、表紙だけがちらっと映るような小道具なんだろうなと思って打ち合わせにいったら、結構しっかり描いてほしい、と言われまして。

資料として頂いた放送済の第1話を見たら、テーマが重くてしっかりした良いドラマで僕も本当に感動してしまって。「ああ、これはもうドラマ用の小道具としてではなく、本屋さんに並ぶちゃんとした絵本としてしっかり描かないとだめだ!」と。
ドラマの進行とともに、坂元さんから絵本用の文章を都度いただいて、それに合わせてイラストを仕上げていきました。

───この依頼を引き受けられる時、どんなことを思われましたか?

テレビの小道具として使われる絵本のイラストという依頼だったので、まずはテレビの画面で見てもきちんとわかるようにしないといけない、という側面があったんです。少ない秒数しか映らなくてもパッと目に入るようにするために、切り絵のようなシンプルな絵柄にしようと思ったのですが、大人でも理解するのが難しい“命”をテーマにしたこの絵本の内容と、僕のイラストのタッチは合うだろうか、と少し悩んだりもしました。

───物語の核となる「ウーギークック」の姿。真っ黒な体に一つ目、長い爪に大きな口。こう書くととても恐ろしい怪物のようだけど、なぜかとっても愛嬌もあって。ウーギークックのキャラクターはどの様に誕生したのでしょうか。また、具体的にモチーフにしたものはあったのでしょうか?

坂元さんからいただいた絵本のテキストに、ウーギークックについて“一つ目で爪が鋭い”とあったので、プロデューサーからは「特に一つ目を強調してほしい」という要望をいただいていました。なので、“一つ目”については特に意識しましたが、ウーギークックの基本的な外見は絵本のテキストを読んだ時、パッと浮かんだものなんです。
キャラクターを決める前に、ラフで2バージョン描いたんですがドラマの製作側からはどちらでもOKといただいたので、シンプルな切り絵っぽい感じのイラストにするために毛がフサフサしているのではない方にしよう、と、最終的に僕が決めました。
ウーギークックのキャラクターデザインの段階では、この物語がすべて明らかになっていたわけではないんです。だから当時は僕なりに「もしかするとその時々で大きくなったり小さくなったり、形を変えることもあるんじゃないか」とストーリーを予想したりして。それで、ウーギークックには実はバーバパパのイメージもちょっとだけあるんです。

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林田 秀一(はやしだしゅういち)

  • 大分県出身。イラストレーター。書籍の装画、挿絵やCDのジャケット作画、
    テレビ番組へのイラスト提供などで活躍。著書に『さんかくぼうしのミンミン』(文・野島一成/谷澤伸幸、原案・山川紀生、飛鳥新社刊)。

作品紹介

ウーギークックのこどもたち
ウーギークックのこどもたちの試し読みができます!
文:坂元 裕二
絵:林田 秀一
出版社:河出書房新社
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