INSECT LAND(インセクトランド)ホタルのアダムとほしぞらパーティー INSECT LAND(インセクトランド)ホタルのアダムとほしぞらパーティー
作: 香川 照之 ロマン・トマ  出版社: 講談社 講談社の特集ページがあります!
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コヨセさんの描く絵のみどころは?

そうして全力を尽くして描かれたコヨセさんの絵についてお伺いしてみましょう。

─── 今回は「夜の世界」という設定。そこが前作との大きな違いですよね。音をたてちゃいけないなど、制約もあったのでは?

コヨセ:「そうですね。今回は全部背景があって、しかも夜。大丈夫かなーというのはちょっとありましたね。表紙で言うと前作が白で今回は黒。でも描いているうちに開き直りが出来て、今回は全く違うものになりそうだ、と思いながら描いていきました。」

でもその背景が描かれる事により、コヨセさんが持っている詩情的なものがプラスの要素として加わったのではと、なかがわさん。音についてもお伺いすると「意識していなかった」とおっしゃるコヨセさんに対して、すかさずなかがわさんが「今回は音はなしでいく、と言ったのはコヨセさんですよ!」と突っ込んでいました(笑)。文章でも「おとなも こどもも ねむるまち」「しーっ!ほえちゃ だめだよ。」という部分などがあり、お二人とも無意識にその辺りは実現されていたようですね。

─── 今回描かれた絵の中で、みどころを教えてください!

コヨセ:「やっぱりぎょうれつの楽しさですね。実際に家があるような住宅街を、そんなちっちゃいのがぞろぞろ歩いているっていう楽しさ。それだけで充分かなって。

確かに夜の街を小さな小さな車両がずーっと並んで進んでいく様はかなりワクワクします!この玄関前の敷石の場面もかなりの迫力ですよね。

夜の世界
▲車両が迫ってくるかのよう。他にも、小さなこびと達と大きな犬や敷石など、様々な要素がぎゅっと詰まっています。

コヨセ:「最初は、この絵の出来はどうなのかなぁという不安もあったんですよ。そしたら天の声(※)があって。「あれはいい!!って言ってるよ」という声を聞いて。それでああ、ここはこれでいいんだと思えたんです。」
※天の声とは誰なのか?後程じっくり説明します!
なかがわ:「この場面については、例のおたすけ会議でも、設定について(砂利道とか素材感についてとか)色々突っ込んでいて、コヨセさんいじめをたくさんしてたんです。ですので画家さんとしては混乱をしていたかもしれないんですけど、この車の見せ方についてはやっぱり素晴らしいと思いましたね。」

───プレゼントの中味がとっても気になりますね。

なかがわ:「プレゼントの中味は男の子でも女の子でもどちらでも喜ばれるものにしました。でもこの包みの形は気になりますよね〜。」

なかがわさんもおっしゃる通り、とても気になる形をしているプレゼント。やはり皆さんから色々な意見が出たようなのですが、実はコヨセさん、この絵を描かれる前に実際にプレゼントを包まれたそうなのです。その時の写真がこちら!(編集部からお借りしました。)

プレゼント プレゼント
▲確かに同じ形をしていまね・・・。コヨセさんいわく、「忠実に描いているだけです。」

─── 今回は大胆で迫力のある構図も印象的です。

コヨセ:「小さい小さいこびと達と、実際の玄関や窓の高さ、クリスマスツリーなどの大きさ。そのスケール感を表現するにはかなり苦労しましたね。そのまま一画面で描くと画面がすごく大きくなってしまいますしね。」

結果的にはとても独創的で大胆な場面がたくさん生まれています。クリスマスツリーを上から見た構図なんて、なかなか見たことないですよね。部屋の中での小人たちの大仕事ぶりも臨場感たっぷりに伝わってきますよ。

コヨセ:「部屋の中で登場するこの赤いトラックですが、設定はわかりましたか?おうちの中に最初からあったラジコンカーなんです。この家には大きなラジコンカーがあるという事は最初から調べがついているんです。(毎年のデータが蓄積されていて、サンタさんの支部からこびと達に指令があるそうなんです。)だから家の中でもスムーズに作業が進んでいくんですね。」

うーん、なるほど。子ども達ならきっと気がつくのではないでしょうか。言われてみれば犬がいる事も調べ済みの様子です。ちなみに、その赤いトラックはコヨセさんが持っているふるいブリキのおもちゃをモデルに描かれたそうですよ。なかなか味わいのある姿をしているんです。

天の声とは?そしておたすけこびと誕生秘話

─── さて、気になるのが先ほどコヨセさんのお話の中に登場した「天の声」。一体誰の声の事なんでしょう?

なかがわちひろさん なかがわ:「天の声というのは・・・実は私の息子でして。」
ここで、そもそもの『おたすけこびと』誕生秘話まで話がさかのぼります!必読です。

なかがわ:「うちの息子は、小さい頃から働く車が大好きだったんです。1歳の頃からゴミ収集車を見て興奮するような子で。だから、毎日色んな工事現場に連れて行かされたり(これが退屈!)、夜になると今度は『はたらくくるま図鑑』というのを持ってきて『読んで!』。それが、ひたすら説明を読まされている感じなんです。でも間違えば『ちがう!』と指摘されるし、毎晩それは砂をかむような読みきかせを繰り返してきたんですよ。
面白くないなーと思って<働く車が出てくる絵本>を読んでも、彼には図鑑くらいハードなものじゃないと物足りないらしく。それで、母親が読んでも退屈しない働く車の本をつくりたい!という野心がその時芽生えたんです。

一方で、おうちでは誕生日の時にはケーキを作ってあげていたんです。スポンジにクリームをまっすぐきれいに塗っていくのって結構難しいでしょ?(私の頭の中には働く車図鑑がいっぱい入ってるから)ああ、ロードローラーが出てきてざーっとならしてくれたら楽なのにな!と思ったのがそもそもなんです。」

そういう状況になっても、ロードローラーはなかなか出てこないですよね!息子さんの働く車好きは相当なもののようです。更にお話は続きます・・・

なかがわ:「『きょうりゅうのたまご』という私の作品があるのですが、

きょうりゅうのたまごきょうりゅうのたまご

作・絵:なかがわ ちひろ
出版社:徳間書店

これは、<働く車と恐竜が好きな息子>のために作ったという絵本なんです。主人公の男の子が恐竜のたまごを探すために、ちっちゃなパワーショベルに乗って土の中に潜って行く場面があるんですよ。でも私、働く車に全く愛がないものですから、これは調べないと、と思ってコマツ・テクノセンタという所に行って取材までしたんです。

働く車に愛のあるおじ様方に車両について色々語ってもらい、大きなウインドウの向こうのデモンストレーション(広大な土地で実際に働いてその機能を見せてくれる場所があるそうなんです。)というのがあってじっくり眺めて。実際に私、試運転までしましたから!(何とその時の写真が『きょうりゅうのたまご』の著者紹介写真として掲載されているのです。是非見てみてくださいね。)そうして、私なりに一生懸命愛を込めて描いたのが『きょうりゅうのたまご』の中に登場するパワーショベルなんです。でもそれを見て息子が冷静にダメ出しをするんです!何か違う、と。」

それにしても、そのお話(『きょうりゅうのたまご』)はかなり面白そうですね・・・。
そんな一生懸命の取材時、一方でこんな出来事もあったそうなんです。

なかがわ:「ウィンドウの向こうの(巨大な車両達の砂を積み上げたりする)デモンストレーションをずーっと見ながら『これってさ、あの働く車たちがお菓子つくってるみたいだよね・・・。』とつぶやいたんです。そしたら横にいた編集長がガバっと起きて『それだ!』って言ったんです。それでお話をつくれという話になって『ああでしょ、こうでしょ、』なんてすぐ「おたすけこびと』のお話の原型ができちゃったんです。」

それが『おたすけこびと』が誕生する瞬間!でも・・・

なかがわちひろさん なかがわ:「私絶対絵は描きたくないから!って言ったんです。それが条件。働く車に愛がある絵描きさんを探して作ってくれればいいけど、私は絶対にイヤ!そこから絵描きさんを探しているうちに白羽の矢がたったのがこちらのコヨセさん〜!」

「そうだったんですね。編集長がガバッと起きたんですね。」と相変わらずマイペースのコヨセさんなのでした。

なかがわ:「長くなりましたけど・・・そういう訳で、先ほどの『天の声』というのがその働く車両が大好きな息子なんだというお話です。
『おたすけこびと』が出来た時、校正段階で絵を見てよだれをたらしながら『これだよこれ!おかんの絵に欠けていたのはこれなんだ』『しびれるな〜』とか言っちゃって。それで、その時からコヨセさんに『息子がここがいいって言ってるよ、ここがしびれるって言ってるよ』とか時々メールしていたんです。」

─── その息子さんが太鼓判を押したのが先程のあの場面なのですね。

なかがわ:「今回はこびと達が外に行くという設定なので、車両がどうしても小さくなっちゃうでしょ。そういう状況説明というのも大切だけど、やっぱり働く車が好きな読者には「血わき肉おどる」というページも欲しいのだ!という事なんですね。子どもって、実はそもそもこういう目線で見てるんですよね。さっと視線が近づいて『ここがこうなって、これが回って・・・』なんて。そういう意味ではとても子ども達を満足させるページになっていると思います。これは男の子ならではの感覚なのでしょうか?なかなか女性チームではわからない部分なんですよね。」

『おたすけこびと』シリーズでの「天の声」の存在は、かなり重要な様です!?

隠れたみどころを教えてください!

─── 絵本ナビ読者の為に、何か隠れたみどころを教えて頂けませんか?

なかがわ:「コヨセさんの、こびと達への愛というのを感じるお話をひとつ。この子たち、今回は冬服を着ているんです!気が付きましたか?」

気が付きませんでした〜

なかがわ:「前作では綿のシャツだけだったんですけど、今回はフリースの上着をきて、あたたかいカラー軍手をしているんです。ブーツも長め、中にはもこもこが付いている冬仕様です。これはね、コヨセさんの父心なんです。」

─── コヨセさんもこびと達に関して、何かありますか?

という事で、コヨセさんにもいくつか挙げてもらいました。実際に購入された方はお手許で確認しながら楽しんでくださいね!

なかがわちひろさん&コヨセ・ジュンジさ

☆ 18ページ、めくって19ページ目。
「前のページで転んじゃったこびとがいて、次のページではそのこびとにヘルメットを渡してあげているこびとがいます。」(細かいポイントですね。)
☆ 前作同様、服の色で仕事を分けているそうです。
「黄組み、赤組のひと」なんて気がついた小さな子もいるんだそうですよ。親子で考えてみてね。
☆ こびと達があの依頼人から荷物を預かっている場面では、ちゃんと仕事に専念しているこびと、嬉しくてはしゃいじゃっているこびとなど様々な様子が楽しいですよ。
☆ サンタさんの部屋に置いてあるマグカップに描いてあるこびとは、前作『おたすけこびと』に一度だけ登場しているらしいです!

─── サンタさんの部屋はどんなイメージで描かれたんでしょうか?

コヨセ:「寒い国の牧場的な所にある建物。外は寒そうなんだけど、中は暖かくて、というイメージですね。仕事部屋として整然としていて、棚はたくさんいるだろうな、とか考えながら。サンタさんの机の上には住所録もつんであります。」
なかがわ:「サンタさんが着ているセーターもお洒落ですよね。コヨセさん、ニットものには愛があるんですよね。」
コヨセ:「ありますね。」
そんな所も見所かも?

─── 今回も見返し(表紙の裏の部分と、裏表紙の裏の部分)がかなり楽しい感じですね。

コヨセ:「ここには気が付きましたか?最初と最後の見返しのページは楽しいでしょう。」
なかがわ:「ここは女の子もキャー、ワーなんて言いながら楽しめるポイントですよね。この2ページだけで、子ども達はどんどん物語をつくっていくんです。絵によってどんどん世界が広がっていく、それがとっても面白いですよね。」

コヨセ:「この見返しの場面はね、作品の制作が始まって最初の頃に描きあげたんですよね。おたすけ会議に持っていって『これいいでしょ?』って言ったら、にこりともしないでチェックが始まったんです。」(一同笑)

なかがわちひろさん&コヨセ・ジュンジさ なかがわ、編集者:「そんなことないですよ!最初は感動してたじゃないですか。でも、それには理由がちゃんとあるんですよ。前作『おたすけこびと』の時、コヨセさんが想像以上の数のこびとを描いてきたのでびっくりしたんです。それはいいのですが、ちょっとおかしな事になっているこびとや塗り残しがたくさん見つかったんですよ。だから、みんなでチェックを入れる作業は恒例になっていて。でも、今回は一個も間違いはなかったですね。」
前回の取材では、こんな話は一つも出なかったですよね(笑)。

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コヨセ・ジュンジ

  • 1949年生まれ。福岡県出身。セツ・モードセミナー卒。雑誌「アン・アン」「セサミ」「BMWバイクス」などでイラストレーションを描く一方、単行本の装丁や表紙画を手がけ、児童書の仕事に『家出の日』(徳間書店)の挿絵がある。「おたすけこびと」が初の絵本作品。

なかがわ ちひろ

  • 翻訳家として『ふしぎをのせたアリエル号』『すてきなあまやどり』(徳間書店)『魔女のこねこゴブリーノ』(福音館書店)『せかいでいちばんつよい国』(光村教育図書)など多くの訳書を手がける一方、創作絵本や童話に『のはらひめ』『きょうりゅうのたまご』『たこのななちゃん』(徳間書店)、『カッパのぬけがら』『しらぎくさんのどんぐりパン』日本絵本賞読者賞を受賞した『天使のかいかた』(理論社)、『おじいちゃんちでおとまり』(ポプラ社)などがある。


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