明治製菓「マーブルチョコ」キャラクターの「マーブルわんちゃん」など、数多くのキャラクターデザインを手がけられるとともに、「怪談レストラン」シリーズの挿絵や絵本「おはなし・くろくま」シリーズの創作など幅広く活躍されているたかいよしかずさん。ミキハウスさんの小さなお子さんから楽しめる絵本のディレクションも、数多く手がけられてきたそうです。
その中から、今回はたかいよしかずさんがイラストも手がけられている「いろいろしかけえほん」シリーズ、「わくわくとびだすえほん」シリーズ、「とびだすなりきりえほん」シリーズのお話を中心にお伺いしました!
普段は大阪で活動されているたかいさん。忙しいスケジュールの合間をぬっての取材にも関わらず、創作活動について、ご自身について、とてもパワフルで楽しいお話を沢山してくださいました。それもそのはず、たかいさんの名刺の肩書きには「HAPPY CREATOR(ハッピークリエイター)」なる文字が!人を楽しませることにかけてはプロなんです。その辺りの話も含めてお楽しみください!
●一緒につくっていくのが楽しい「しかけえほん」!
▲ひっぱったり、まわしたり、いろいろなしかけが登場します。丈夫なボードブックとかわいいどうぶつたちが小さい子に嬉しいシリーズです。
▲ページをめくると、子どもたちの大好きな恐竜・乗り物・食べ物がダイナミックに飛び出します!
─── いろいろなタイプのしかけ絵本。どれも小さな子でも楽しめる、シンプルだけど驚かせてくれるしかけ、元気になるような絵が特徴ですね。こういったしかけ絵本のアイディアというのは、どのように考えられていくんですか?
基本的にはクライアントさんありきなんです。まずミキハウスさんの担当の方から、「今度、とびだす絵本を出したいんです」とか、「こういう動きを使って何かできませんか?」という様なお話をお聞きします。本によって違うんですけど、担当者の方から例えば「動物のテーマでこんな感じでいきたいです」など、具体的にアイディアがある場合もあるし、「テーマはあるけどあとは好きに考えてください」と言われる場合もあります。色々ですね。もし、ある程度アイディアがあったとしても、僕の方で「こんなんどうですか。」と言って、そこにどんどんプラスさせて頂いて、そうやって一番いいものを出しましょう、という感じです。
僕は、普段からとびだす絵本とかしかけ絵本がすごい好きなんです。動くとか、飛び出すとか、すごく楽しいですよね。おはなし絵本というのも勿論楽しいですけど、そこに動きがつくっていうのは、やっぱり子どもたちの興味を引くと思うんです
─── つくっている時は「子どもたちを驚かせたい」と思われながら?
そうですね。でも、仕事をしていて一番思うのは、まず担当の方に喜んでもらいたい。そこなんです。きっとそれが、この本を見てくれる方にも伝わるやろう、という思いではやってますね。あとは、自分は何が面白いかっていうことですよね。
(ミキハウス編集者の方より)
たかいさんは、すごくイマジネーションが豊富。最初に私たちから提案させていただきますが、「こういうほうが面白いですよ」っていう発想は、本当に沢山持っていらっしゃって。そういった意味では制作させていただく中で、本当にどんどん、どんどん、たかいさんワールド満載の世界になっていくというのが、ご一緒しての感想です。
─── 基本的なことをお伺いしてしまいますが、しかけ絵本をつくられる時、「しかけ」と「絵」というのは同時に考えられるのですか?
例えば、「じゃあ、飛び出す絵本作りましょう」ということになった時に、「どんな物を飛び出させれば面白いかな」ということを、まず最初に自分の頭の中で考えるんですよ。要するに机の上ですね。でも、机の上で考えることってやっぱり限界があるので、「あ、もうこれ以上自分の頭の中の物は全部出した」となったところで、やっと外に出て市場調査をしたり、いろんな物を見て「あ、こんな手もあるんや、そうか、そうか」と。また帰ってきて、もっとどんどん、プラスしていけないかな、と考える。
例えば、食べ物だったら「ラーメン食べさせたいな」って思うんですね。
そのラーメンを食べるしかけがどうしても作りたい、ズズーってすすって。こんな面白いのないよなって。でもね、ページをもどすとまた口からバーッって戻るんです(笑)。そこが、なんかおかしくてね。
だから最初に、「こんなふうに動いたらいいな」というイメージが、頭の中にある程度あって。もしサンプルで同じような動きのあるものがあれば、「この構造を使ってこういうことできませんか」と相談をさせてもらいながら。なかなかそこでうまく動かない事もあるんですよね。僕の頭の中では「もっとこんなふうに動いてほしい」という思いがあって。
結局、しかけ作りを専門にされる方に入ってもらえて、その思いをミキハウスさんを通して伝えて頂けたので、とても楽しいものができたと思います。残念ながら僕はその方とお会いする機会はなかったんですけどね。
そのラーメンを食べているしかけは、音が聞こえてきそうなくらい!印象的。
─── 自分で考えて、それを自分でつくっていく・・・という制作過程とはまた全然違うのがしかけ絵本なんですね。色々な人の手や意見が入っていって。大変ではないですか?
きっと、そこが一番面白いのだと思います。僕は、本を作る時いつでも、担当の方との「勝負や」と思ってるんですよ。どっちが面白いものを作れるかとか、色んなことを考えられるかというね。それはどこの出版社でも同じで、その担当の方と「勝負しましょう」というスタンスで挑むんです。僕が「こっちの方が面白くないですか」というと、向こうから「こっちの方がもっと面白いと思います」というのが出て、で、「本当、そうやな」と思ったら、それを形にして行く。それでもね、やっぱり自分のほうが面白いと思ったら、「こっちの方が面白いと思うんですけど」ってしつこく、ずーっと言い続けるんですよ(笑)。
だから僕の場合、基本は作家ではないと思っているんです。半分デザイナーで、半分イラストレーターっていうスタンスで仕事に向き合うんですね。作家さんといえば、「自分はこれが描けます、この世界はどうですか」というのがあって、合う人がいると「じゃ、お仕事しましょう」となる。デザイナーは、クライアントさんありき。クライアントさんの要望をどれだけ聞いて、それを自分の中に取り込んで、形にできるかっていうところが一番の基本なので、コミュニケーションがないと絶対成り立たない世界なんですね。そこでいろんなことお聞きして。クライアントさんが言うことと、消費者の思ってることとは、相反することが結構多いんです。だから「じゃあ、今回は両方の意見を聞いて、このへんで線を引きますよ」っていう、線引きをできる人がデザイナーになってほしいなと思うし、僕もそうありたいと思っています。どっちの目線にも、どっちの立場にも立てる、そんなふうに思いながら、仕事はしてます。