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作: 征矢 清 絵: 林 明子  出版社: 福音館書店 福音館書店の特集ページがあります!
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《スペシャルコンテンツ》インタビュー

2012.06.28

きむらゆういちさん、田島征三さん
『おもいのたけ』インタビュー

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きむらゆういちさん、田島征三さん『おもいのたけ』インタビュー

「あらしのよるに」シリーズ(あべ弘士絵、講談社)や「ごあいさつあそび」シリーズ(偕成社)で人気の絵本作家きむらゆういちさん。最新作は『とべ バッタ』(偕成社)や『ふきまんぶく』など独特な世界観を生み出す絵本作家、田島征三さんと共に作った『おもいのたけ』(えほんの杜)です。お二人がタッグを組むのは『オオカミのおうさま』(偕成社、2009年)以来、実に3年ぶり!きむらさん、田島さんそれぞれに『おもいのたけ』の制作秘話を伺いました。
まずは、文章を担当したきむらゆういちさん。

おもいのたけ

おもいのたけ
文:きむら ゆういち
絵:田島 征三
出版社:えほんの杜

ある日、タヌキは奇妙な"音"を耳にする。
オンドロロン、オンドロロン
音に誘われるまま洞窟の中に入っていくと、
そこには奇妙なキノコがいた…。

動物でも人間でもないものが主人公の絵本

─── 今回の『おもいのたけ』が生まれたきっかけを教えてください。

もう何年も前なんだけど、田島征三さんのアトリエにお邪魔したときに、田島さんから一緒に絵本を作りたいって言われたんですよ。しかも「できれば、動物でも人間でもない、わけの分からないものを主人公にしてほしい」という要望もあって…。

─── 「動物でも、人間でもないもの」というのは…かなり難しいリクエストですよね。お話があったとき、すぐにキノコをメインにした物語にしようと思ったんですか?

いや、しばらくは何を主人公にするかなかなか出てこなくて、でもある日、「オンドロロン」というフレーズが生まれて、キノコのストーリーができた。ただ、『おもいのたけ』という題名に決まったのは本当に最後の方。ラストに「おもいのたけと よぶようになった」という文章を書いて初めて決まったんだ。それまでは「オンドロロン」がタイトルだったんだよ。

─── 「オンドロロン」はミステリアスで印象的なフレーズですよね。文章ができてから、実際の作品になるまでしばらく時間がかかっていますが、何かあったんでしょうか?

文章が完成したとき、僕の中で「地味な本だから、受け入れてもらえるのかな…」って戸惑いがあったんだ。大きな冒険をするわけでもないし、場面もほとんど変わらないし、主人公はキノコだし…。もうひとつ決め手となるものがほしいなって、しばらく温めていたんだけど…そのうち忘れてしまって(笑)。
それが2010年に田島さんとトークショーで話をする機会があって、舞台の上でしゃべっているときにフッと思い出したんだ。その勢いで「本にしよう!」って言ったら、たまたまそこにいた編集者が興味を持ってくれて、絵本にすることが決まったの。

─── すごいタイミング良く決まったんですね。一番最初に書いて温めていたものと、今、絵本になったもので大きく変わった部分はありますか?

大きくはないですね。ただ、細かい部分は結構書き直しました。最初の文章では、動物たちはグチしか言っていないんだ。でも、それじゃ暗いだけの絵本になるから「大好き」とか「ありがとう」とか、色んな「思い」を吐露することにしたの。

─── 田島さんの絵を見たときはどう思いました?

実は僕、田島さんにすごい憧れがあるんです。僕が美大生だったとき、田島さんの『ちからたろう』を見て、すごい衝撃を受けた。「こんな絵があるんだ」って、自分でも真似して描いてみようともした。その田島さんと仕事をすることで、田島さんのような絵を描きたいという思いが満たされましたね。
特に『おもいのたけ』は僕が最初に見た頃の田島さんのタッチに近くて、すごい嬉しかったね。

─── 『おもいのたけ』の中に、木村先生自身に当てはまる「思い」はありますか?

…そうだね、まずクマ。「あんまり頼るなよ」と…(笑)。
あと、サルは昔の僕だね。中学生くらいまで大人しかったので。

─── この絵本は幅広い年齢にも楽しんでもらえる内容だと思うのですが、最初に思っていた、「地味かもしれない」という不安はなくなりましたか。

場面がほとんど変わらないことを逆手にとって、小学校や幼稚園の学芸会とかで、オペレッタとして演じることのできる作品になるんじゃないかな…って、新しく書き直しているときに思ったんだよ。
動物たちをクラス全員で演じられて、それぞれが抱えている思いを叫ぶ。ラストはちょっと大変だけど…。やってくれる所があったら、教えてほしいなぁ。

─── 最後に絵本ナビユーザーへ『おもいのたけ』の見所をお願いします。

うーん。
『おもいのたけ』を通じて伝えたいと思ったのは、「自分の意見を言いましょう」ってことだけではなくて、思いを吐き出しているときの自分の姿を客観的に見ることなんだよね。物語でそれぞれの思いを吐き出した動物たちは一時スッキリするんだけど、おもいのたけが転がってきたとき、「ああ、オレって何て顔をして言ってたんだろう…」って我に返る瞬間を作っている。そこまで読んでもらえると嬉しいな。そもそも、人間関係の揉め事が難しいのは、誰も間違っていないってことなんですよ。ただ言うタイミングが間違っているだけ。テストで悪い点を取って帰ってきた子どもに「あんたが勉強しないからいけないんでしょ」…ってここぞとばかりに言いたい気持ちは分かるけど、それでは子どもは「よし、勉強しよう」って思わない。「分かってるよ、そんなこと!」って反発するだけなんです。

─── 聞いていて、胸が痛いですね…。確かに、みんな正しいと思っているんですよね。

そう。みんな正しいから困っちゃうんだよね。相手に聞いてほしくて言うんだけど、それを言うと望んでいる方向と反対の方に行っちゃうことがあるから怖いんだよね。
『おもいのたけ』はそれぞれの思いがはじけ散って、みんな本当の意味で大人になれたってお話なんです。

─── ありがとうございます。田島征三さんにお聞きしたいことはありますか?

この絵の大胆さが田島さんらしくて大好きです!
72歳でこんなエネルギッシュな、若々しい絵を描く秘訣を教えてください。

【田島 征三さんのインタビュー】へ続く

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好評につき第2弾!23人の絵本作家からの手紙

木村 裕一(きむらゆういち)

  • 1948年東京生まれ。多摩美大卒。
  • 造形教育の指導、白鴎短大講師、テレビ幼児番組のブレーンなどを経て、現在、絵本、童話の創作、戯曲、コミックの原作など広く活躍している。『あらしのよるに』で講談社出版文化賞絵本賞、産経児童出版文化賞JR賞受賞。作品に、『あかちゃんのあそびえほんシリーズ(1)〜(10)』(偕成社)、『カケルがかける』(絵・ひらのてつお/えほんの杜)、『どうするどうするあなのなか』(絵・高畠純/福音館書店)など多数。

田島 征三(たしませいぞう)

  • 1940年、大阪府生まれ。幼少期を高知県で過ごす。多摩美術大学図案科卒業。大学在学中に手刷り絵本『しばてん』(1971年に改作し、偕成社より出版)を制作。
  • 1969年より東京都西多摩郡日の出町で農耕生活を営みながら絵画や版画、絵本を制作。1988年、伊豆半島に移住する。絵本に『とべバッタ』『ふきまんぶく』(偕成社)、『ガオ』『おじぞうさん』(福音館書店)、『いろいろあっても あるきつづける』(光村教育図書)など多数。エッセイ集に『絵の中のぼくの村』(くもん出版)などがある。
  • 国内外での受賞多数。日本を代表する絵本作家として精力的な活動をつづけている。

作品紹介

おもいのたけ
文:きむら ゆういち
絵:田島 征三
出版社:えほんの杜
オオカミのごちそう
作:木村 裕一
絵:田島 征三
出版社:偕成社
オオカミのともだち
作:きむら ゆういち
絵:田島 征三
出版社:偕成社
オオカミのひみつ
作:きむら ゆういち
絵:田島 征三
出版社:偕成社
オオカミのおうさま
作:きむら ゆういち
絵:田島 征三
出版社:偕成社


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