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絵・文: 川浦 良枝  出版社: 白泉社 白泉社の特集ページがあります!
お正月、節分、夏祭り...季節に縁のある遊びに触れながら、親子で楽しめる日本の行事をご紹介。

連載

【連載】せなけいこさん 絵本作家デビュー50周年おめでとう! せなさんを囲む人たちインタビュー

2019/07/29

第2回 福音館書店 元編集者 本多慶子さんインタビュー

第2回 福音館書店 元編集者 本多慶子さんインタビュー

せなけいこさんのデビュー作にして、第17回サンケイ児童・出版文化賞を受賞した「いやだいやだのえほん」シリーズ
この絵本を担当した編集者が、当時、福音館書店で働いていた本多慶子さんです。
以降、50年に渡り、仕事だけでなくプライベートでも親交の深い本多さんにお話を伺いました。
●貼り絵は子育て中のお母さんに最適な画材だったのです。
―― 本多さんは、せなさんのことを絵本作家になる以前からご存じだったのですか?
私がせなさんを知ったのは、せなさんから展覧会のお知らせいただいたときです。
せなさんはそれまで、武井武雄さんの元で長く画家になる勉強をされていました。
当時、福音館書店の編集長だった松居直さんに作品を見せたこともあったそうなのですが、そのときは出版につながらなかったそうです。
―― そのときはすでに貼り絵で作品を作られていたのでしょうか?
そうです。せなさんは兄弟子の人から貼り絵の技法を習ったそうで、かなり長いこと貼り絵で作品を作っていたのですが、子育て中は、それが絵本作りにとても役立ったそうなんです。
子どもをあやしながら絵の具を使った絵を描くのはとても大変ですし、子どもが触って口に絵の具が入ったりしたら危ないでしょう。
でも、貼り絵だったら紙を貼ってしまったら動かないから、もう安心。
「家庭で子どもを育てながら作品を作るには、貼り絵が一番良いわね」ってよく言っておられました。
―― 本多さんはせなさんの個展で、はじめてせなさんにお会いしたんですか?
はい。せなさんから「“自家製の絵本”を作ってるのですが、本多さん見てくださいますか?」って聞かれたの。
そこで見せていただいたのが、ご自身で手作りされた『にんじん』の絵本でした。
せなさんのご主人、6代目柳亭燕路さんの落語会のポスターの裏を使って作られていたのがとても印象的でしたね。
―― はじめて見たときから、これは絵本になると思ったのですか?
ええ、思いました。インスピレーションっていうでしょうか。
当時の絵本って静かな、子どもに寄り添うような作品が主流でした。
せなさんのような、強烈で、元気で、エネルギッシュな作品ってまだ出ていなかったのです。
だから、こういう絵本はこれからきっと必要になると思いました。

―― 出版にあたって修正などは特に必要なかったのでしょうか?
たしか、完成までに2年間くらいはかかったと思います。編集部から色々手直しのお願いをさせていただいてね。
せなさんはよくご自身のことを「私はぶきっちょです」っておっしゃるんです。
「注文に合わせて作るなんて、そんな器用なことはできません」、「だから、本多さんのお願いをその通りに作ることはできないけれど、自分なりに変えて作り直すので、それを見てください」って。
それで、お待ちして、「いやだいやだのえほん」が生まれました。
この絵本の奥付の所に「おかあさんの作った絵本」って書いてあるでしょう。
―― はい。
これは編集部で考えてつけたのです。
それが当時のお母さんたちの間でとても話題になって、せなさんの絵本が出版されてから、5〜6年くらい、お母さんが子どもと絵本を作ることが流行りました。
―― せなさんの作品が、日本中のお母さんが子どもと絵本を作るきっかけになったんですね。
その後、『手づくりの絵本 楽しみ方 作り方 考え方』(草土文化)として1冊にまとめられました。
●『いやだいやだ』の絵本のモデルはせなさんご自身なんです。
―― なんでもすぐに「いやだ いやだ」というルルちゃんや、お母さんと離れるのがイヤで「あーん、あん」と泣き出す男の子。
せなさんの絵本は50年間ずっと子どもたちの味方のように思います。
せなさんはどのようにして絵本のテーマを決められていたのでしょうか。
せなさんがデビューする前に松居直さんに持ち込みをしたお話をしましたが、そのとき、松居さんから「貼り絵の絵は、筆で描くような躍動感が出しづらい。貼り絵が動くような世界を作れると面白いですね」とアドバイスを受けたそうなんです。
せなさんはそのことをずっと考えてこられて、自分や、自分の子どものことなら、生き生きと作ることができると気づかれたそうです。
それで、子どもたちのために「自家製絵本」を作りはじめたのです。
―― 『にんじん』も『ねないこだれだ』も、せなさんとお子さんとのやりとりの中から生まれた作品なんですね。
『にんじん』は、我が子ににんじんを好きになってほしくて作った作品だそうです。
でも、お子さんがにんじん嫌いだったわけではなく、せなさんとご主人がにんじんがお嫌いだったんですって。
それを聞いたとき「ああ、せなさんらしいなぁ…」と思いました。
『あーんあん』も、ご自身の子どもの頃を思い出して描いたとおっしゃっていました。
せなさんが幼稚園に通われていたころ、お母さんやお手伝いのねえやが帰ってしまった後に、よく「あーんあん」と泣いていたそうなのです。
『ねないこだれだ』は、お子さんがなかなか夜寝なかったらしくて、何とか寝かせようと思って作ったんですって。
ところがね、子どもたちは「おばけなんか、全然怖くない」「おばけとお友だちになった」って楽しんだもんだから、せなさんも子どもを脅かすのではなくて、おばけってこんなに楽しいんだよ、おばけの世界に飛んで行こうって感じに作ったっておっしゃっていました。
―― 「早く寝ないと、おばけが来て連れて行っちゃうよ〜」とちょっと怖い意味のラストだと受け取りがちですが、せなさんご自身は、おばけと友だちになっちゃう。ハッピーエンドとして描かれているんですね。
そう。せなさんにとって「おばけは友だち」。
おばけになって、おばけの世界に飛んでいくなんて、最高に楽しいことなんです。
せなさんはそれをお子さんと一緒に楽しんだから、きっと読者の子どもたちにも、楽しんでもらいたいと思ったんです。
子どもたちにとって、読んだときの喜びや楽しみが大きいほど、子どもの中に生涯残り続けます。
―― 『いやだいやだ』はお子さんのエピソードなのでしょうか、それともせなさん?
多分、両方。せなさんのお子さんもそうだし、せなさん自身「大人になっても『いやだいやだ』って反抗してきたわ」とおっしゃっていたことがありました。
でも、お子さんだけでなく大人だって「いやだいやだ」っていうことはあるし、言っていいと思うのです。
従順な人間よりも「いやだいやだ」って主張する人間の方が、魅力的でしょう。
ただ、せなさんのお子さんたちは自分たちのことが絵本に出てくるものだから、とても恥ずかしがっていたそうです。
お兄ちゃんは本屋さんにせなさんの絵本が並んでいるのを見つけると、隠していたんですって。
そして、妹がなにかいたずらをすると、「そんなことしたら、お母さんに本にされちゃいますよ」ってよく言っていたそうです(笑)。
―― お子さんたちからしたら、絵本でみんなに知られてしまうと思ったんですね。
●せなさんはすぐ一人で歩いて行ってしまう方なんです。
―― 本多さんはプライベートでもよくせなさんと旅行に出かけられると伺いました。
そうですね。チェコやスロバキア、スペイン、ドイツ……。
IBBY(国際児童図書評議会)の国際会議が2年に1回開催されていまして、その開催国へよく一緒に出かけていました。
せなさんはとにかく健脚で、どこへでも歩いていってしまいます。いつだったかドイツに行ったときは、フランクフルトにある古本屋に行ってきますって一人で行こうとするのです。
でも、見ず知らずの土地に一人で行かせるのは不安ですよね……。だから、私と友だちも一緒に行って、せなさんが本を買い終わるまでずっと待っていました。
そんなことが国内でも海外でもしょっちゅう。気づくとひとりでフラフラ〜と歩いて行ってしまう人なのです。
それと、彼女、旅先にカメラを持っていかないのです。
代わりにスケッチブックを持っていって、道でもどこでも気に入ったものがあるとサラサラ〜と鉛筆を走らせて……。
旅行から帰ってきた後に、描いた絵をコピーして送ってくれるのです。
それがとても素敵で、今でも私の宝物です。
せなさんの旅先スケッチの一部。

―― すごい! 絵に残してあると、写真とは違った思い出になりますね。
このチェコ語のスケッチは私だけのプレゼント。チェコに私が旅行に行くときに、向こうでの会話が困らないようにと、送ってくれました。「困ったときはこの絵を指さしてみせなさい」って。とても親切な人なのです。
チェコ語の手作り冊子も本多さんの宝物です。
―― 今回、「いやだいやだのえほん」シリーズの全ての原画が展示されるなど、大注目の「せなけいこ展」が開催されています。
本多さんは展覧会のどんなところに注目されていますか?
そうですね。まず図録が「いやだいやだのえほん」シリーズと同じサイズなんです。私もインタビューをお受けしたのですが、絵本と一体化したみたいな、とてもかわいい図録です。
それと、絵本になった作品以外にもせなさんの「自家製絵本」の『にんじん』も展示されるそうです。絵本の原画との違いなどが見れるのはとても貴重な機会だと思います。
ぜひ、多くのご家族に、せなさんの世界を楽しんでいただきたいと思います。
―― ありがとうございました。


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