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連載

東京とトロントで。絵本を描くこと。みやこしあきこ×シドニー・スミス インタビュー

2019/12/27

第2回 作品のこと

第2回 作品のこと

よるのかえりみち』で、2016年度のボローニャ・ラガッツィ賞特別賞を受賞した、みやこしあきこさんと、『うみべのまちで』で、2018年度のケイト・グリーナウェイ賞を受賞したカナダ在住の絵本作家、シドニー・スミスさん。 東京とトロント、海を隔てて絵本作家として活躍されている同世代のおふたりは、ボローニャ・ブックフェアで出会って以来、親しく交流をつづけています。

インタビュー第2回目は、それぞれの作品について、おはなしをうかがいました。

インタビュー・構成=沖本敦子
翻訳=岩城義人
『うみべのまちで』について
――『うみべのまちで』は、海辺にあるちいさな炭坑のまちが舞台。そこに生まれ、やがては自分も父のように炭鉱で働くであろう少年が、うみべのまちで過ごすおだやかな一日が、しずかに、やさしく描かれています。心が遠いところへもっていかれるような圧倒的な読後感でした。この作品を描かれる上で、いちばん心を砕かれたのは、どんなところでしょう?
シドニー:シドニー いちばん大変だったのは、この物語が、特殊であり普遍的でもある点でしょうか。ここに描かれているのは、実在する場所で、じっさいに多くの人たちが送った人生です。ぼくが心がけたのは、少年の目にうつるささいなもの、だれもが知っている日常から、物語を表現することでした。日常的であればこそ、一見まったく別の世界のような話でも、この少年に共感をいだくことができるのではないかと。
『うみべのまちで』より Town Is by the Sea (c)2017 Joanne Schwartz  (c)2017 Sydney Smith
――最初にテキストを読まれた後、シドニーさんはご自身の絵を通じて、どんなことを表現したいと思われましたか?
シドニー:一読して、海のイラストが重要だと思いました。ぼくも海のそばに住んでいたので、わかることもあります。海は永続的であり、本書の美しいテキストで語られているように、実にさまざまな顔をもっています。
――『うみべのまちで』では、さまざまに表情を変える、海と光と風が、とても魅力的に描かれています。この作品を描くにあたり、モデルとした場所はありますか?
シドニー:非公式ですが、ぼくはこの物語を、ノヴァ・スコシア州の東端にあるグレース・ベイという場所に設定しています。そのあたりは、かつて炭鉱のまちでした。ぼくたちの文化にとってとても大切な場所です。ぼくはこの絵本で、グレース・ベイを描こうと思いました。制作中は、何度もそのまちを訪れ、たくさんの写真をとり、スケッチもしました。じっさいにその、ちいさなまちに立って、海からの風を感じ、海面にきらめく太陽を見て、なにを感じるかが重要だったのです。
『うみべのまちで』より。さまざまに表情を変える海がやさしく描かれる。 Town Is by the Sea (c)2017 Joanne Schwartz (c)2017 Sydney Smith
――シドニーさんが子ども時代を過ごしたまちは、どんなところですか?
 ぼくが育ったのは、大西洋からそう遠くない田舎の農場で、家では馬やヤギやニワトリをかっていました。父はミシュランのタイヤ工場につとめ、母は家で3人の子どもの世話。ぼくたちは季節を問わず、よく海へドライブに行ったものです。その後、東海岸から引越しましたが、はなれてみて気づいたこともあります。そのちいさなまちには、対立するふたつの要素があったことです。生活はまずしいけれど、自然は豊か。海岸にはごつごつとした崖があり、やわらかい砂浜がありました。
炭鉱でのしごとを終えて・・・ Town Is by the Sea (c)2017 Joanne Schwartz  (c)2017 Sydney Smith
おとうさんがかえってきます Town Is by the Sea (c)2017 Joanne Schwartz (c)2017 Sydney Smith
――子どもの頃から、幾度となく思い出すような、印象的な情景はありますか?
シドニー:面白い質問ですね。海のそばや農場で育った思い出はたくさんありますが……。印象的なのがひとつ。子どもの頃、4歳くらいだったかな、ころんでひざをすりむいたんです。本当はたいして痛くなかったのだけど、ぼくは泣くことにした。すると友だちのおばあちゃんがぼくをなぐさめ、ひざの土をぬぐってくれたんです。そのとき、ぼくは心に決めました。その瞬間のことをずっと忘れずにいようと。
――最後に、『うみべのまちへ』の読者に向けて、メッセージをお願いします。
シドニー: この絵本を読むみなさんへ。楽しんでもらえるよう心をこめて描きました。テキストを書いたジョアンさんもぼくも、この本を通じて、ぼくらが育ったまちをみなさんと共有したいと思っています。みなさんの住むまちとは一見ことなるかもしれません。でも本当はとても似ているのです。このお話の少年のように、ぼくたちみんなに大切な人がいて、その人たちを守り、いっしょに生きていくことを願っているのですから。
『ぼくのたび』について
――みやこしさんが、長年絵本のテーマとしてあたためていた「たび」。設定やストーリーの変更を幾度も重ねて最終的に完成した『ぼくのたび』では、たび自体の楽しさではなく、ここではない別の場所へ想いを募らせる気持ちや、ある日、どこかへ出かけていくことへの憧れが描かれています。ちいさなホテルのオーナーである「ぼく」は、自分の住むまちをいちども出たことがありません。
みやこし:最初は主人公がたびをするお話でした。でもなかなかこれだという感じが得られず、描いている間ずっと、私はたびのなにが好きなのかと問い続けていました。何度もラフを作り直していく中で、たびに出る前の期待に膨らむ気持ち、知らない世界への憧れがわたしの表現したいたびの素晴らしさだと気付きました。狭い範囲で暮らしていたちいさい頃から、たくさんたびをしたいまもずっと変わらない気持ちです。
『ぼくのたび』より I dream Of A Journey (c)2018 Akiko Miyakoshi

ラフスケッチから原画完成までを追った、メイキング動画。
みやこしさんが、リトグラフという手法を使い、どんな風に絵本をつくっていくのかを見ることができる。
――今回の絵本の原画は、すべてリトグラフでつくられています。リトグラフという手法を選択されたのはどうしてですか?
みやこし:いつも描きたい事が表現できる手法で描いています。濃厚な光と闇を表現したいときは木炭で黒の濃淡をつけたり、主人公の服の色を鮮やかに見せたいときは白い紙の地を生かして他の色を絞ったり。ここ数年間リトグラフを続けてきて、リトグラフ独特の色の重なりがとても綺麗なのでいつか絵本もリトグラフで描いてみたいと思っていました。むしろ、このリトの特性から着想を得た絵がこの絵本にはたくさん入っているんです。
リトグラフの工房で、みやこしさんが一枚一枚刷り上げたうつくしい色彩。 I dream Of A Journey (c)2018 Akiko Miyakoshi
――今回の絵本のインスピレーションを得た瞬間や情景があれば、教えてください。
みやこし:旅行先で実際に出会った風景、気持ち、人々がどのページにも出てきます。主人公のおじさんも、クリスマスにウィーンで泊まったホテルの人や、たびに出たい出たいと言っている友人や、ちいさい頃に憧れていた写真の中のヨーロッパ など、私の中の色んなピースが寄せ集まって生まれました。
夏にドイツに滞在した際の経験が着想の一部になったシーン。 I dream Of A Journey (c)2018 Akiko Miyakoshi
――今回の絵本を描く上で、いちばん大切にしたことはどんなことですか?
みやこし:私にとってのたびの良さを伝える。借り物の言葉ではなく、私が実際に経験したことを隅々まで込めるようにしました。そうすることで読む人にも自分の事のようにリアリティを感じてもらえるかなと思います。
――子どもの頃から、幾度となく思い出すような、印象的な情景はありますか?
みやこし:保育園の帰り道に通る、見晴らしの良いお気に入りの場所があって、その道が、家に飾ってあった写真の中の風景につながっていると思ってました。カレンダーかなにかの写真で、広くて晴れ渡った野原にぽつんと木があって、その下の日陰で遊んでみたくて、思い出の中で現実と混ざっています。
シドニーさんの答えをきいて、似たような経験も思い出したのですが、保育園のお迎えが来なくて最後の1人になってしまったとき、先生が泣いている私を膝に乗せて私の涙を指でぺろっとなめて「あっこのなみだ、しょっぱい!」と言ったんです。それが私にはなんだかすごくうれしかったのを覚えています。
ひこうきにのって しらないまちへ。  I dream Of A Journey (c)2018 Akiko Miyakoshi
――最後に、『ぼくのたび』の読者に向けて、メッセージをお願いします。
みやこし:旅について語る人はいきいきしています。わたしも旅の話をするのが好きです。この本を読んだ後も、旅から帰ったばかりのように語りたくなるような気持ちになってもらえたら、そんなに嬉しいことはありません。


1982年埼玉県生まれ。武蔵野美術大学卒業。大学在学中から絵本を描きはじめる。2007年より1年間ベルリンに滞在。2012年『もりのおくのおちゃかいへ』(偕成社)で、第17回日本絵本賞大賞を受賞。『よるのかえりみち』(偕成社)で、ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞、ニューヨークタイムズ・ニューヨーク公共図書館絵本賞を受賞。作品に『ピアノはっぴょうかい』『これ だれの?』『ぼくのたび』(ブロンズ新社)、『のはらのおへや 』(ポプラ社)、『かいちゅうでんとう 』(福音館書店)他多数。1児の母。東京都在住。
HP: http://miyakoshiakiko.com
twitter: @akikomiyakoshi
『ぼくのたび』 作/みやこしあきこ ブロンズ新社

ぼくのたび
 作/みやこしあきこ ブロンズ新社 定価1500円+税

ぼくがこのホテルをはじめて、どのくらいになるだろう? 

主人公のホテルのオーナーは、世界中からやってくるお客さんから知らない国のはなしをきき、旅への思いを募らせます。そして、あるひ、ぼくは、おおきなかばんをもって・・・。リトグラフによる美しい色彩と幻想的な絵が、読者をここではないべつのどこかへと誘います。

●絵本の製作過程を記録したメイキング動画はこちら


シドニー・スミス Sydney Smith 

カナダのノヴァ・スコシア州郊外に生まれる。ノヴァ・スコシア美術デザイン大学卒業。ジョナルノ・ローソン原案の文字のない絵本『おはなをあげる』(ポプラ社)で、カナダ総督文学賞(児童書部門)、ニューヨークタイムズ・ニューヨーク公共図書館絵本賞など、さまざまな賞を受賞する。海辺の炭鉱のまちのいちにちを描いた『うみべのまちで』(BL出版)で、2018年にケイト・グリーナウェイ賞を受賞。2児の父。家族とともにトロントに在住。 

twitter: @Sydneydraws


『うみべのまちで』  文/ジョアン・シュウォーツ 絵/シドニー・スミス  訳/いわじょうよしひと BL出版

うみべのまちで
 文/ジョアン・シュウォーツ 絵/シドニー・スミス
 訳/いわじょうよしひと BL出版 定価1600円+税


うみべの炭鉱のまちで暮らす少年のいちにちが、しずかにやさしく描かれます。時間によってさまざまに姿を変える海。夕方になると炭鉱からおとうさんがかえってきて、家族を眺めて潮風に吹かれます。ありふれた日常の愛おしさが、しずかに胸にせまる絵本。ケイト・グリーナウェイ賞受賞作。


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