すうじかるた 100かいだてのいえ すうじかるた 100かいだてのいえ
作: いわい としお  出版社: 偕成社 偕成社の特集ページがあります!
かるた以外の遊び方もたくさん! 絵本から生まれたあたらしいかるた
りおらんらんさん 30代・ママ

買ってよかったです
100かいだてシリーズ。子供たちが大好…

連載

かこさとしさん90歳おめでとう! 記念連載 かこさんを囲む人たちインタビュー

2016/11/24

【連載】第7回 福音館書店 古川信夫さんインタビュー

【連載】第7回 福音館書店 古川信夫さんインタビュー

かこさとしさんは『ダムのおじさんたち』(「こどものとも」1959年1月号 福音館書店)で絵本作家としてデビューをしました。そして1967年、「だるまちゃん」シリーズの第一弾『だるまちゃんと てんぐちゃん』が誕生します。「だるまちゃん」シリーズは多くの子どもたちに愛され、2017年で生誕50年を迎えます。今回は『だるまちゃんと とらのこちゃん『だるまちゃんと だいこくちゃん』、そして『マトリョーシカちゃん』の編集を担当した古川信夫さんにおはなしを伺いました。
●「だるまちゃん」の原点。『マトリョーシカちゃん』を出版するまで。
―― 古川さんがはじめてかこさんとお会いしたときのことを教えてください。
私がかこさんにはじめてお会いしたのは、まだ20代で駆け出しの編集者の頃でした。前担当者の時田編集長と一緒に、かこさんのお宅にお邪魔したのです。かこさんはその頃すでに、人気絵本作家として多忙な日々を過ごされていたと思いますが、とてもにこやかに迎えてくださったことを覚えています。
―― 人気絵本の編集を引き継ぐということで、プレッシャーなどは感じていましたか?
もちろん、とても感じていました。しかし、打ち合わせに伺うといつも、かこさんが柔和にお話してくださるので、私としては、一生懸命勉強させていただくという気持ちで、仕事を進めました。

―― 『だるまちゃんと とらのこちゃん』が古川さんが編集をした最初の作品だと伺いました。
そうです。1984年2月号として月刊絵本「こどものとも」で発表されました。
―― 「だるまちゃん」シリーズの登場人物の特徴として、日本の子どもたちに親しまれている、昔話や民族玩具がモデルになっていますよね。『だるまちゃんと とらのこちゃん』で、かこさんが「とらのこちゃん」を登場させようと思ったのはなぜなのでしょうか?
『だるまちゃんと とらのこちゃん』を出版したとき、かこさんのメッセージを、折り込みふろく「絵本の楽しみ」(1984年2月号)に、書いていただきました。その中でかこさんは「虎は(中略)日本人に畏敬をもって愛好されているようです。」とおっしゃっています。そして「庶民映画の主人公や、プロ野球のチームの愛称となっているのも御承知のとおりですが、特に地域の人々や子どもたちには、いわゆる民族玩具の細工物や、寺社のお守りとして各地で親しまれている」と書いておられて、そのことが、かこさんの興味をかき立てたようです。
―― なるほど……。かこさんは絵本を制作するとき、とてもたくさん資料を用意され、調べられてから制作に入ると、以前伺ったことがあるのですが、資料集めなどを編集者の方が手伝うことはあるのでしょうか?
かこさんは、とにかくご自分でいろいろな資料を集め、調べを尽くしてからおはなしを作られるので、編集者が資料を用意することはあまりありません。『だるまちゃんと とらのこちゃん』のときも、すでにきちんと「こどものとも」の場面数にして構成された状態で、ラフスケッチ(下描き)をお渡しいただきました。
―― 絵本の中に子どもができる、まねっこ遊びやままごと、石けり、鬼ごっこなどの遊びが出てくるのも「だるまちゃん」シリーズの特徴だと思います。今回は「泥んこ遊び」と「いたずらがき」が取り上げられました。泥んこ遊び、子どもたちは大好きですよね。
かこさんは、この遊びを取り上げたことに対して「子どもたちはその成長のある時期、どろどろのものをこねまわしたり、くちゃくちゃするところへわざわざ入っていったり、ぴちゃぴちゃはねとばしたり、ぺたぺたぬったりかいたりすることを、大変好みます。」とおっしゃっています。「汚いとか、あぶないとか、後始末がいやだとかいう大人の心配や危惧もものかは、じかに肌に触れあう体に感じる接触のよろこび、満足、開放感、そしてそれを表現する擬態語擬声語からもわかる独特な生命リズム」(上掲折り込みふろくより)に子どもたちが心を躍らせるのだと、ご自身の経験から確信されていたのです。
―― 身近な「泥んこ遊び」だけでなく、ふだんはなかなかすることのできない「いたずらがき」が絵本の中に登場するのもワクワクしますよね。

そうですよね。この遊びを取り上げたことに対して、かこさんは「特に家主さんに叱られるからとさせなかったペンキぬりや、日曜工作のお父さんの仕事となってしまったペイント塗装を、思う存分ダルマちゃんたちにやってもらい、一度はやってみたいとひそかに思っている子どもたちにすこしお裾分けしたということです」とおっしゃっているんです。
―― 「だるまちゃん」シリーズでは、だるまちゃんたちと一緒に子どもたちも楽しい遊びをやっている気持ちになれることや、実際にだるまちゃんたちと同じ遊びを楽しめることが、よりいっそう子どもたちを惹きつけるんですね。
実際に当時の編集部には、絵本に登場する遊びを遊んでみたという子どもたちや親御さんからのお手紙が、たくさん送られてきていました。
―― 子どもたちがだるまちゃんたちのように遊んだというお手紙は、かこさんも古川さんも、とても嬉しいですよね。古川さんの中で、特に思い入れの深い作品は何ですか?
『だるまちゃんと とらのこちゃん』が出版された1984年の12月に、かこさんのもう一冊の絵本が出版されました。それはロシアの民族人形「マトリョーシカ」を主人公にした絵本『マトリョーシカちゃん』。この「マトリョーシカちゃん」、実は「だるまちゃん」のルーツともいえるキャラクターなんです。
かこさんは戦後、セツルメント活動(※)として、子どもたちに自作した紙芝居を上演していました。いっぽうで海外で出版されている子供向け雑誌に興味を持たれていたそうで、当時のソビエト連邦の月刊雑誌を定期購読されていたのだそうです。当時のことをかこさんは「おそらく戦争中には思うようなものが発表できなかった人たち、子どもたちに何とかよいものを届けたいと欝々としていた文化人たちが、ワーッと一斉に誌面に出てきた時代だったのでしょう。それを見て、これはなかなかのものだ、と感心したんです」(「母の友」2013年10月号)とおっしゃっています。「とくにおもしろそうだな、と思うおはなしは辞書と首っぴきで読んだり」したのだそうです。
※セツルメント活動:学生などが労働者地域に対して、宿泊所、託児所などの設備を設け、住民の生活向上と自立のための助力をする社会事業。
―― かこさんが目をキラキラさせて、辞書をめくっている様子が目に浮かびます。
その月刊雑誌の中に載っていたのが、「マトリョーシカちゃん」とういうおはなしでした。「それなら日本の民族玩具を主人公にして面白いおはなしができないか」と思ったかこさんは、さっそく、日本の郷土玩具を調べ上げ、「真っ赤な色と手足をなくしたあの形は、日本人の感性が作り上げたものです。それに、子どもさんのおもちゃには、三角ダルマだのダルマ落としだのいろいろある。これはもう、日本の郷土玩具の代表として、いてもいいだろう、と。」(「母の友」2013年10月号)こうして誕生したのが「だるまちゃん」シリーズでした。
―― 「だるまちゃん」シリーズの原点ともいえる「マトリョーシカちゃん」のおはなしを、なぜかこさんは絵本にしたいと思われたのでしょうか?
「だるまちゃん」シリーズが人気になるにつれ、かこさんの中で、「『マトリョーシカちゃん』を絵本にして、日本の子どもたちに楽しんでもらいたい」という思いがわいてきたのだと思います。私がかこさんから『マトリョーシカちゃん』のラフを見せていただいたとき、出版するにはまず原作者に許可を取ることが必要だと思いました。
―― 今のようにメールでやり取りができない中、原作者の方を探すのは大変ではありませんでしたか?
幸いなことに当時、ソ連全体の著作権を扱う機関があったので、そこに申請をして原作者と交渉を行いました。たしかに簡単なことではありませんでしたが、「だるまちゃん」シリーズの原点ともいえる作品の編集に携われることは、私にとってとてもやりがいのある仕事でした。慎重に交渉を進めていき、1984年12月、無事に『マトリョーシカちゃん』を出版することができました。

―― 『マトリョーシカちゃん』の表紙に、「原作 ヴェ・ヴィクトロフ、イ・ベロポーリスカヤ」と表記されていますが、『マトリョーシカちゃん』のおはなしは、ソ連の月刊雑誌に掲載されていたものと同じなのでしょうか?
ソ連の雑誌では、コマ割りマンガのように描かれていましたが、構図や登場するキャラクターなどは、ほとんど原作の通りに制作されていると思います。
―― 「だるまちゃん」と「マトリョーシカちゃん」の意外な関係、『マトリョーシカちゃん』の誕生秘話など、貴重なおはなしが伺えて、とても嬉しいです。古川さんがかこさんとお仕事をされていた中で感じた、かこさんの意外な一面などはありますか?
そうですね……。意外というか、私が驚いたエピソードなのですが、『だるまちゃんと とらのこちゃん』の打ち合わせに伺ったとき、かこさんがA3用紙くらいの紙を見せてくれました。そこには、目のイラストと、四角い箱が描かれていたんです。聞くと、以前から患っている緑内障によって、今後どのように視力が失われていくかの予測を立て、年数ごとに図に描いていらっしゃるのだそうです。もし、私だったら、自分の置かれている境遇をこんなに冷静に見つめて、あとどれだけ子どもたちのために絵本を描けるか、予測を立てて判断することなんてとてもできません。かこさんのその様子を見て、改めてかこさんは絵本作家であると同時に、科学者なんだと感じました。

―― ご自身のお体を冷静に分析しながら、90歳になった今もなお、子どもたちのために絵本を作り続けている姿は、本当に素晴らしいですよね。
かこさんは中学時代、上野の美術館でレオナルド・ダ・ヴィンチの作品をご覧になったことがあって、科学的なことと芸術的なことを一方に偏らないで、同じように楽しんだり、表現したりすることができるということを、ダ・ヴィンチを通じて知って、大きな衝撃を受けたのだそうです。子どもたちも、ダ・ヴィンチのように物事を多角的に考えることができれば、少年時代のご自身ように、軍国主義に惑わされるような失敗はしないだろうと考えられたそうです。私は、科学絵本で子どもたちに正確な知識を伝え、「だるまちゃん」シリーズのようにユーモアあふれる物語で子どもたちを楽しませてくれる、かこさんのような絵本作家はなかなかいらっしゃらないと思います。
―― 科学にも、芸術にも精通している……。かこさんは、子どもたちのダ・ヴィンチのようですね。今日はいろいろとお話しいただき、ありがとうございました。

現担当編集者・井原美津子さん(左)と一緒に。
●だるまちゃん50周年企画 『だるまちゃんと におうちゃん』など新刊続々発売!

だるまちゃんとにおうちゃん だるまちゃんとにおうちゃん」 作・絵:加古 里子 出版社:福音館書店

発売日:2016年12月21日

『だるまちゃんとにおうちゃん』が月刊絵本「こどものとも」700号(2014年7月号)として出版された際、インタビューを行いました。こちらもぜひご一読ください。

だるまちゃんしんぶん だるまちゃんしんぶん」 作・絵:加古 里子 出版社:福音館書店

発売日:2016年12月21日


序章 かこさとしさんってどんなひと?
90歳にして、新作を次々と発表されているかこさとしさん。
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『コウノトリのコウちゃん』かこさんインタビュー&コウノトリの里、越前市レポート
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