
いちばんの仲良しだと思っていたのに。 ちょっとしたことがきっかけで、なんでこんなにも不安になってしまうのでしょう。 あんなに自信満々だったのに、突然、相手の考えていることがわからなくなって、胸がざわざわして落ち着かない。そうなると、ますますいろいろなことを考えすぎて・・・。
この絵本のネズミもそう。 友だちのテンの家にあそびにいくと、テンは留守でした。 ドアの貼り紙には「ともだちのうちにいくのでいえをるすにします」と書いてありました。だから、ネズミはなんの疑いもなく、いちばんの友だちの自分の家にテンが遊びにくるのだと思いました。
走って家に帰って、テンを待ちます。 でも、テンは姿を現しません。 その時、ネズミははじめてテンのいう「ともだち」は自分じゃないのかもしれないと傷つきます。じゃあ、だれがテンのいう友だちなんだろう。森に住むほかの仲間たちのことを想像しながら、ますます不安になるネズミ。ネズミはいてもたってもいられなくなってテンを探しにいくのです。
児童文学作家の岩瀬成子さんは、子どもの繊細な心の揺らぎを丁寧に汲み取った作品を数多く世に送り出しています。優しい言葉でネズミの気持ちを代弁してくれます。今回初の絵本作品となった中沢美帆さんが絵を担当。それぞれの生活を大切に営む動物たちとその暮らしを支える静かな森を温かく描いています。
ネズミは、テンに出会えたでしょうか。テンがいう「ともだち」は誰だったのでしょう。 読み終わったあと自然と優しい気持ちになり、友だちに会いたくなる素敵な絵本です。
(富田直美 絵本ナビ編集部)

ネズミがテンの家を訪ねると、「友達の家に行きます」と手紙がありました。「テンの友達って、ぼくじゃないのかも」とネズミは悩みます。モグラ? タヌキ? ウサギ? みんな、ネズミよりもすごい特技を持っています。考えれば考えるほど、どんどん不安だけがふくらんでいきます。「きっとみんなでぼくをのけ者にして、遊んでるんだ」と自信を無くしてしまったネズミ。けれども、そんなネズミの前に現れたのは……。相手が好きだからこそ、思いがすれちがうこともある、ほほえましい友情の話です。

自分は相手を一番の友達だと思っている。
でも相手は?
そんなこと、普段は考えないけれど、ふとしたことからだんだん不安になっていく気持ちが、とても分かりやすく描かれていました。
しっかりとグループができ始める年齢の子は、特に共感できる内容かと思います。
うちの長女はそろそろ理解できるかなぁ。今度読んでみよう。 (tori.madamさん 30代・ママ 女の子7歳、女の子4歳)
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