小学5年生だったてつおが新聞配達を始めたのは、どうしても新聞が読みたかったから。
「読みにおいで」と言ってくれる、おじいさんとおばあさんがいたから。
今から70年以上も前のこと。戦争が終わって1年が経ち、お父さんを亡くしたてつおは、お母さんのふるさと出雲で暮らしています。てつおは、三人の子どもを育てるために働くお母さんをいつも手伝っています。そんなてつおがある日言うのです。
「ぼく、しんぶんはいたつしたいんだ。」
お母さんは心配しますが、てつおはただ新聞が読みたいからだと言いはります。
それからてつおは毎日、くる日もくる日も新聞を配達しました。
配達し終わると、みはらのおじいさんの家で新聞を読ませてもらうのです。
やがておじいさんが亡くなり、それでもおばあさんが「読みにおいで」と言ってくれて・・・。
「新聞配達に関するエッセーコンテスト」に寄せられた岩國哲人さんの最優秀作品から生まれたこの絵本。
政治家となった岩國さんの実話をもとにしたお話なのだそうです。
てつおにとって、子どもにとって、新聞を配達するという仕事、そして新聞を読むということ、まわりに助けられてきたということ、それらがどれだけ人生の糧となってきたのか。絵本を読むだけで、その感謝の気持ちが心から伝わってきます。時代や環境が変わっても、このエピソードはきっと子どもたちの心のどこかにひっかかってくれるはずでしょう。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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