日曜日、ジェイはおばあちゃんと一緒に教会を出ると、バスにのってあるところへ向かいます。
「あめが ふってるのに、なんで バスを またなくちゃいけないの?」
友だちが車で手をふってとおりすぎていくのを見て
「なんで ぼくたちは くるまに のらないの?」
ジェイは文句を言いますが、おばあちゃんは「木がストローで水をごくごく飲んでいるみたい」とか、「ほらドラゴンバスがきたわ」とかユーモアたっぷりに言葉を返します。
さあ、バスが来ましたよ。
バスの中では、ギターを持つ人、びんを大事そうに抱える人、目の不自由な人、いろんな人が乗り合わせます。
ジェイが口にすることを、おばあちゃんはいつも素敵な言葉で言い換えます。
たとえば「なにもみえないって、たいへんだろうな」とジェイが言うと、「あら、みみでもちゃんとみられるのよ」というふうに。
そして目の不自由な人は「はなでだってみられますよ!」「いいこうすいをおつけですね」とにこやかに返すのです。
バスの中では、人と人がふれあう“そのときだけの時間”が流れます。
目をあわせてにっこり挨拶し、ふふふと笑い合い、車内のギターにみんなで拍手。
ジェイは楽しくなってきます。
さて、そんなふうにバスに乗ったジェイがいったいどこへ向かっているかというと……?
2016年、アメリカで最も優れた児童文学作品の作者に贈られるニューベリー賞と、最も優れた絵本作品の画家に贈られるコールデコット賞のオナー賞をダブル受賞。
アメリカで高い評価を得た翻訳絵本です。
ジェイが向かった先、<ボランティアしょくどう>は、アメリカでは<スープ・キッチン>と呼ばれる場所です。
友だちが行かない場所に、なぜか日曜になるといつもおばあちゃんと行くことに、ジェイは疑問を持ちますが……。
おばあちゃんの言葉はジェイをどんどん楽しくさせ、感性をゆたかにしていくのです。
目をとじて音楽を感じるジェイの姿は、とっても自由で魔法に満ちた世界に身をおいているように見えます。
スープを配る場所で、いつも会うボボさんとトリクシーさんと、サングラスマンを見つけて嬉しそうに手をふるジェイも同じです。
どんなことも見方を変えればゆたかに感じられることを、子どもたちに「おはなし」と、カラフルな「絵」で見せてくれます。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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