
流氷が海岸に押し寄せる、1月の寒い日。 お腹をすかせて海辺までやってきたキタキツネは、流氷から陸にむかって飛ぶ、しろふくろうに出会います。 その2、3日後にも、しろふくろうの姿を見たキタキツネは、しろふくろうが足に鳥をつかまえているところを見て、あとを追いかけました。 そして、雪の上のしろふくろうの食べ残しを見つけ、夢中になって食べました。 キタキツネにはたいへんなごちそうです。
それからというもの、キタキツネはしろふくろうを懸命に追いかけるようになりました。 鳥やうさぎをうまくつかまえることができるしろふくろう。 どんなに雪がふっても平気なしろふくろう。 寒さに強いしろふくろうが狩りをした、その食べ残しのおかげで、食べ物が少ない真冬をなんとか生き伸びるキタキツネ……。
そして3月。あたたかい風にかわりはじめたある日、カラスの群れにおそわれたしろふくろうがいました。 駆けつけたキタキツネは……?
こごえそうな、真冬の暗い灰色の空。雪と氷に閉ざされた世界で、一羽のしろふくろうと、一匹のキタキツネの姿が描かれます。 春が近づき、雪国にも青空がふたたびもどったそのときに、しろふくろうの身に起こった出来事は、キタキツネがしろふくろうのあとを追いかけまわすだけだった関係を変えます。 厳しい生き物の世界に、こんなふうに助けあう姿があるのですね。 キタキツネが一心にしろふくろうを見つめる姿には、心を揺さぶられます。
流氷が海を覆う冬から、春のはじまり、そしてさわやかな夏にかけて、ぐんぐんと変わっていく景色を、手島圭三郎さんが木版画で生き生きと描いています。 北の大地で、ちがう生き物が、それぞれ精一杯生きる姿をわたしたちに見せてくれる美しい絵本です。 手島圭三郎さんには「カムイ・ユーカラ全5巻」「手島圭三郎の幻想シリーズ全3巻」「北の森の動物たちシリーズ」「生きるよろこびシリーズ」「大自然のいのちいの物語シリーズ」などたくさんの作品があります。 どの作品も、生き物のいのちの一瞬一瞬を切り取った厳かさに満ちていて、ドキドキします。ぜひあわせてご覧になってくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)


流氷をつたってやってきた、しろふくろう。きたきつねは、しろふくろうの後を追って食べ残しをもらいます。さらに食べ残しを求めてしろふくろうを追います。こうして、きたきつねは一番厳しい冬をしのぐのです。ある日、しろふくろうがからすに襲われていました。その時、きたきつねは…。

表題が印象的です。
流氷がやってくる1月、お腹をすかせたキタキツネは、シロフクロウの食べ残しで命をつなぐのです。
なるほど、これはこれでなかなかの知恵です。
そして、流氷が離れていく3月、カラスの群れに襲われているシロフクロウを助けるキタキツネ。
こんな助け合いがあるのですね。
厳しい生存競争の中に、こんな神々しい光景があるとは驚きです。
木版画の持つ雰囲気が、いい塩梅にその光景を紡ぎます。
小学生くらいから、感じてほしいですね。 (レイラさん 50代・ママ )
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