くるみの中には何があるでしょう?
ゆらしてごらん。もし、シャリン、チリンといい音がしたら…。
中にはちいさな宝物。金のりんごやハープや壷。銀の手鏡や鳥かご。
みつけてごらん。もし、りすが隠したくるみなら…。
それはりすの裁縫箱。小さな針刺し、小さなハサミ。ボタンやまち針、糸もみえます。
もし小さなドアがついていたら。
カラーン、カラーンとかすかに音が聞こえたら…?
それか、もしも何も音が聞こえなかったら…。
問いかけと、くるみの外側の形、そしてくるみの内部が交互に描かれます。
描いた絵を切り抜きコラージュして、一枚、一枚の絵に仕上げられたそれぞれの世界。
やさしい細やかなタッチと色彩の中に、さまざまな手触りがぎゅっと詰め込まれているようです。
作者のたかおゆうこさんは、目に見えないものを想像する力を、美しい絵本にして子どもたちに伝えてくれます。
まるで、小さなくるみの中の別世界に、わたしたちもぎゅーっと小さくなって入っていけるような気がします。
そしてそこから果てしない世界につながっているような気がします。
小さくてかたそうな、コロンとしたくるみを手にしたとき、人の想像力はどこまでひろがっていくでしょう?
木の実を、手のひらにのせて。耳をすませて。心をひろげて。
美しい絵とドキドキするようなイマジネーションの力を感じてください。
くるみから世界をあじわう素敵な絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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