空を見上げるのは、とても気持ちが良いですよね。
晴れ渡った青い空、夜明けの群青の空、日暮れの赤く色づく空……。
しかし、高層ビルが立ち並ぶ都会では、
大きく広がる空を見ることも少なくなってきています。
それは、この絵本に出てくる動物たちの町でも同じようです。
主人公は絵を描くことが好きなサル。
彼の住む動物たちの町は、昔のような緑豊かな風景が失われ、
無機質な茶色い建物が立ち並ぶようになりました。
建物のせいで青い空が見えなくなり、町の動物たちは悲しみに暮れることになりました。
「このままだと 気がへんになってしまいそうだ」
「そとにいても 小屋の中にいるみたいだわ」
「空が見えないと めざめがわるくて やる気もでない」
動物たちは集まり、話し合い、
「そうだ、空をつくろう!」
絵描きのサルに頼んで、建物に空の絵を描いてもらうことを思いつきます。
サルの描く空の絵は大人気。
動物たちは安心して、再び建物を建てられるようになりました。
求められるままに空を描き続けるサル。
増え続ける空色の建物。
「ぼくたち、空をつくることなんて、してよかったのかな。」
本物の空が見えなくなった空を見上げて、つぶやくサルの決意とは……。
本の装画などで活躍するイラストレーター・村尾亘さんの初出版となる絵本。
擬人化された動物たちの世界は、現在の私たちに向けて
静かな警鐘を鳴らしているよう。
本を閉じて、じっと空を見上げたくなる一冊です。
(木村春子 絵本ナビ編集部)
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