
川沿いの桜並木は駅に向かう道。
すたすた カツカツ チョコチョコ タタタッ
まだコートが必要なくらい風が冷たい3月半ばの月曜日。 急ぎ足のおねえさんに、のろのろ歩く小学生に、走る高校生。 いつもの光景です。 桜の木に目を留める人はいません。
でもその間、桜の木は春に向けて準備をはじめているのです。 小さな芽がふくらんできみどりに、その芽からピンク色が顔をのぞかせて。 だんだんつぼみがほころんで、5枚の薄い花びらが……ひらいた!
すると、最初に目を向けるのは鳥たちです。 そして道行く人も足をとめ、桜まつりの準備も始まります。 夜になれば灯りに照らされ幻想的な風景になり、週末は大勢の人が訪れて。 女の子がねころがって、言います。
「わあ ピンクいろの てんじょうだ」
誰もが少しずつ心が浮き立ってくる3月半ばから4月半ばの約一ヶ月。横に長く広がった大きな画面を贅沢に使い、 桜の木に訪れるドラマティックな変化を丁寧に描き出しながら、日常を過ごす人々と自然との関わり合いの物語も味わうことができます。なんと言っても、「科学絵本」の枠におさまりきらない美しさが魅力的。本編だけでなく、見返しや装丁など全体を通して使われている上品な「さくら色」も素敵です。そして、4月の半ばを過ぎると待っている光景は……?
春が近づく頃、毎年開きたくなる定番絵本の誕生ですね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

桜が咲きはじめると、道行く人々は足をとめ、その数日間は花に心を寄せます。天気に一喜一憂し、そわそわしながら満開になっていく桜を心待ちにするのはどうしてなのでしょう。いっせいに咲く桜の花には魔法のような力があるのかもしれません。3月半ばから4月半ばの約一か月、川沿いの桜並木で繰り広げられる自然と人間のささやかなドラマをお楽しみください。

「さくら」の時期って短いのに、日本人にとっては「さくらの開花」って本当に一大行事のような心境になるんですよね。
天気予報でも「さくらの開花予報」も言うくらいですから。
日本人の心に「さくら」は大きな存在なんだな〜と改めて思う絵本です。
さくらの咲く季節にぴったりな1冊に思いました。 (まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子9歳)
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