クリスマスに男の子の家に来たのは、ビロードでできたうさぎのぬいぐるみ。男の子は毎晩うさぎと一緒に寝たり、一緒に遊んだり、それはそれは大事にしてくれたのです。ぼろぼろになってもうさぎは幸せでした。それは「男の子のほんもののうさぎ」になったと感じていたから。ところが別れは突然やってきて……。うさぎの考える「ほんもの」とは? そしてうさぎの身におこった奇跡とは?
古典的名作と言われ、世界中で愛されてきたお話「ビロードうさぎ」が絵本に。酒井駒子さんの描く、つぶらな瞳で今にも動き出しそうなぬいぐるみ、そのぬいぐるみと男の子との愛らしい触れ合いの場面。いつまで眺めていても飽きることはありません。切ないけれど、しっかりと前を向くことのできるこのお話。子どもたちの心にもきっと響くはずです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
ある日、ぼうやのもとにやってきた ビロードのうさぎ。 たくさんのおもちゃにかこまれて 部屋のすみで小さくなっていたうさぎは 「子どもに愛されたおもちゃは いつかほんものになれる」 ことを知ります。 やがて、ぼうやといっしょにすごすようになった ビロードのうさぎに まほうがおとずれて…。
「ほんもの」って何?
おもちゃにとっての「ほんもの」って?
値段の高いおもちゃや機械仕掛けのちょっとこったおもちゃは、我こそ本物だと自信満々。
でも、ウマのおもちゃが教えてくれます。
心から大事に思われ、子供の本当の友達になったおもちゃが「ほんもの」だと言うことを。
長い年月がたち、古くなり、ボロボロになったとしても。
そして、ビロードのうさぎは、たしかに、その「ほんもの」になりました。
毎日、ぼうやと一緒にすごし、汚れてボロボロになったビロードのうさぎを見て、
「どこがいいんだろ、こんなきたないおもちゃ」
と言ったお手伝いさんのナナに対して、
「この子はおもちゃじゃないの、ほんとうのうさぎなの」
と言ったぼうやの言葉が印象的です。
「ほら、お人形さんが落ちてるよ。」
と言った私に、
「お母さん?これはお人形さんじゃなくって、マリちゃん。ちゃんと名前で呼んであげて。」
と言った娘の言葉を思い出しました。
子供にとって、大切なおもちゃは、ただのおもちゃではなく、人格を持った友達そのもの。
いつも友達と一緒にいる心地よさ。
そして、いつもいつも一緒にいるだけで幸せだという気持ち。
大切なおもちゃと遊んだ思い出。
それは、大きくなっても、どこか、心の芯の部分に、暖かい気持ちとして残っていくんだろうな、と思う絵本でした。 (たかくんママさん 30代・ママ 女の子7歳、男の子4歳)
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