
夜の雪もやみ、元旦の朝をむかえます。 ねずみたちが、年のいちばんはじめに汲む水「若水(わかみず)」を汲み、この水でお雑煮をつくります。 ねずみ、うし、とら、うさぎ、たつ、へび……みんなきちんと着物を着込み、膝の上に手を置いて。 十二支そろって……あけましておめでとうございます。
さあ、新年です。 きらびやかな何段ものお重に詰められたお節料理。 鏡餅にやってくる年神さまにご挨拶をし、初詣へ。 十二支の動物たちは、羽根つき、凧揚げ、すごろく。百人一首に、書き初めと思い思いに楽しみます。 そして、神さまに供えるのと同じお餅を、鍋で煮込んだお雑煮をいただきます。
作者・川端誠さんによると、お雑煮は、神さまにお供えする同じお餅を食べることで、一年の力を授かろうとしたものだとか。 お雑煮をつくる火を大切にするため、他の煮炊きをしないように年末に重詰めにしたのがお節料理。 年末につくるのがお節で、年始につくるのがお雑煮。 だから正月の祝いの膳の主役はお雑煮なのだそうです!
絵本からは、ぴんとはりつめた年始の空気、清冽な水、お正月のとくべつな気配が伝わってきます。 川端誠さんと言えば多くの絵本の本文を、彫刻刀で彫っています。 本書も彫った文字がとても素朴で味わい深いです。
最後は白い雪の中、しめ飾りを外し、朱塗りのお膳をきれいにしまい、赤く燃え上がるどんど焼きで締めくくられます。 白と赤色のコントラストといい、十二支の動物たちの生き生きとしてユーモラスなにぎわいといい、作者が愛する日本のお正月文化を、ページのすみずみまで余すところなく描こうとする姿勢が貫かれた素敵な絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)

牛は初詣、うさぎは羽根つき、龍は凧上げ、へびはスゴロクなど、十二支の動物たちが思い思いにお正月を楽しむ様子を描いた絵本。最後には、神様にそなえるのと同じお餅、お雑煮をいただきます。鮮やかな版画のイラストが華やかな絵本。新しい年を迎えた喜びに満ちています。日本の文化を大切にする著者ならではの作品です。

日本各地のお雑煮から12のお雑煮が紹介されています。十二支と直接関係は無さそうですが、絵本の全ページを通して、お正月の行事と、お正月の遊びを紹介しています。
次第に遠ざかっていく伝統的な正月風景ですが、川端誠さんの思いに温もりを感じました。 (ヒラP21さん 60代・その他の方 )
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