
絵本の中に広がるのは、夕陽に照らされ赤く染まる、ただただ広い空と大地。いるのは「ぼく」と犬のふたりだけ。
フルーーフルーー……
ぼくが笛をふいたら、その音は風に乗り、彼方にこだまして、眠る誰かを呼びおこし。
すっかり暗くなった遠くの地平線からやって来たのは、サル。「タタ タタ」、丸太をたたく音が画面いっぱいにはじけ散る。まるで雨のおちる音。「ビーン ビーン」「カチャ ケチャ」ガゼルがつるをはじき、木の実をつけてクマが踊る。たまらず犬は駆けだし、「オーーーーン」響く遠吠えの音がさらに重なり、音は広がり、ひとつになって……。
ページを開き、目の前で繰り広げられるのは、音が鳴り、重なり、そして音楽の生まれる喜びの瞬間。それは光を放ち、多くの美しい景色を見せ、融合し、やがてはじけとび。その高揚感と静寂を、読者は見て、同時に体感することができるのです。なんて絵本なのでしょう!
一度読めばきっと忘れない、身体のどこかで記憶し、また思い返すことができる。そんな印象的な1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

フルーーフルーー……笛の音は風にのり、彼方にこだまして、眠るだれかをよびおこす。タタ、タタ、カチャ、ケチャ、ビーン、ビーン……!重なり広がり響きあい、音は喜びに満ちていく。圧倒的な画力とみずみずしい感性で絵本の新境地に挑む画家・阿部海太が描く、音楽のうまれる神秘的な瞬間。心地よい余韻がのこる絵本。

夜の野原で笛を吹いたら、きっとこんな感覚になるのでしょうね。
静けさの中から集まってくる、様々な音源たちに気がついて、知らず知らずに一体となって、音楽会の中に自分がいるような陶酔が生まれるのでしょうね。
そんな感覚の絵本です。 (ヒラP21さん 60代・その他の方 )
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