毎日の生活の中でよく見かける身近な鳥、カラス。
皆さんは、カラスにどんな印象を持っているでしょうか?
ごみをちらかす、
黒くて大きくてこわい‥‥‥。
みんなの「きらわれもの」!?
著者の嶋田泰子さんが、これまであまり気にとめていなかったカラスという存在にであわされたのは、頭にうんちを落とされるという体験からでした。いったん意識しはじめると、ごみ置き場をあらすカラスの姿が目につき、攻防がはじまりました。けれどもカラスへの勝ち目はなし。どうにかカラスとの戦いに勝つためには作戦を練らなければ‥‥‥と考えた時に気づいたのが、
「カラスは人間がどんな生きものかということに気づいているようなのに、わたしはカラスのことなんて、なにも知らなかった」ということ。ここから、嶋田さんのカラスへの調査が始まります。
・玄関に届くたまごをどろぼうするカラスの様子。
・1年じゅう日本で暮らしているのは、ハシブトガラスとハシボソガラスの2種類ということ。
・ハシブトガラスとハシボソガラスの見分け方
・もとはふかい森林に住んでいたハシブトガラスがなぜ都会に出てきたのか?
はじめの調査で分かったのは、人間がたくさんの食べ残しをごみとして出すことによって、多くのハシブトガラスが都会に住み着くようになったという事実。人間の都合に振り回されながらもきらわれ者になってしまったカラス、ちょっとかわいそう。そこで嶋田さんはカラスのいいぶんを聞いてみることに。
嶋田さんの観察レポートの中で、とくに面白かったのは、庭に来る5、6匹のカラスに名前をつける場面。
「カー」とひと鳴きしてから姿を見せるカラスは「カー!」、目がやたらとクリクリしているカラスは「ヒトミ!」。何の特徴もなく、印象が薄いカラスは「ジミー!」、著者が一番気になったとびきり美しいカラス「クロスケ」、そしてその「クロスケ」といつも寄り添っている「おつれ」。こんな風に特徴や名前を知ってしまっては、読者である私たちも登場するカラスにぐっと親近感が増してしまいますね。
他にも、カラスの賢さを思い知らされる事件が起きたり、縄張り争いや大変な子育ての様子を垣間見たり、知れば知るほど新たな一面を見せてくれるカラス。
2021年の課題図書中学年の部にも選ばれている本書は、みんなの「きらわれもの」と思われているカラスの正しい見方を教えてくれます。さらに自分の目で観察することの面白さや、相手を知ることでこんなにも世界は広がっていくのだという驚きを伝えてくれるのです。カラスが増えすぎたことによる「ハシブトガラスたいじ」の実態や、それによる生態系への影響など、考えるべき課題も。本の終わりには、カラスに興味を持ち始めた人のために、すぐれているところ、にがてなことをチェックできる、ハシブトガラスの楽しい通知表がついています。 こちらは未完成になっており、カラスに興味を持って下さった人が、たくさんの発見をして完成させて下さったら嬉しいと、嶋田さんからのメッセージがあります。夏の自由研究のテーマとして取り組んでみるのもいいですね。
最後に挿絵の魅力についてもお伝えしておきたいのですが、絵本作家、イラストレーターとして活躍中の岡本順さんによる挿絵は、カラスの動きのひとつひとつ、羽根の開き具合、くちばしのカーブの感じ、表情などに魅力がたっぷり。今にも動き出しそうに生き生きとしていて、カラスを目の前で観察しているような臨場感があります。こちらもぜひ観察レポートと合わせて注目しながら楽しんでみて下さいね。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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みぢかな鳥、そしてきらわれものの、カラス。ごみをちらかす、黒くて不吉、大きくてこわい……など、わるいイメージばかりだけれど、本当はどんな鳥なのでしょう?
もともとは森でくらしていたカラス。人の出すゴミにひきよせられて街へとおりてきました。しかし、街のくらしも楽ではありません。なわばりあらそいのきびしさ、子育ての苦労など、いがいと知られていないカラスの生活をほりさげます!カラスを愛する著者が語るノンフィクション。
本作は、著者の嶋田泰子さんが、家の庭にくるカラスたちに興味を持ち、観察日記をつけたことが出発点です。普段は気にもとめないくらい身近な鳥、カラス。でもよくよく調べてみると、驚くほど多彩な表情を見せてくれるのです。この本を読めば、ゴミをちらかす嫌われもののイメージが変わります!
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