
この大都会に降り立ったのは、小さな子ども一人。知らない顔ばかりの中、大きな音や騒がしい人の声。きみはどんな気持ちでいるだろう。どうすればいいのか、わからなくなるよね。
でも、きっと大丈夫。そういう時は裏通りを通って、クワの木の下に隠れたり、暖かい蒸気が噴き出るダクトの下で、昼寝をするといいよ。公園に女の子がすわっていれば、ひざにのせてもらえるかもしれないよ。
吹雪で凍てつく街の中、その子が切なる思いで呼びかけているのは、行方不明になってしまった猫。状況を理解し、読者の誰もが胸をしめつけられる思いをする頃、全てをぎゅっと抱きとめてくれたのは……。
主人公の心情を表わすような景色の切り取り方。寒さが厳しくなっていく風景。道をたどりながら、見えてくる物語。悲しいけれど、あたたかい。まるで一本の映画を観ているような感覚になってくるのは、多くを語らないからなのか。シドニー・スミスが、初めて絵と文章の両方を手がけたというこの作品。美しい装丁も含め、自分だけの絵本として持っておきたくなる1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

大都会に、小さな子どもがひとり。行方不明の飼い猫を探して凍てついた街をゆきます。雪が吹雪になるころ、たどり着いた家で、「きみは きっと だいじょうぶ」そう祈る願いごと家族に抱きとめられるとき、冬の街さえも、あたたかいものとしてわたしたちの心にせまります。 文字のない絵本『おはなをあげる』(ポプラ社)でカナダ総督文学賞、ニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞などを受賞。『うみべのまちで』(BL出版)で、2018年のケイト・グリーナウェイ賞、産経児童出版文化賞翻訳作品賞を受賞するなど、「物語る絵」に定評のある著者が、初めて絵と文章の両方を手がけた作品です。2019年のニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞、2020年のエズラ・ジャック・キーツ賞などを受賞。

初めて読んだ時、よく分からず、二回目読んでみて、点と点が線になり、なるほどーと思った作品です。
最初から、どこか寂しげな雰囲気が漂っているのですが、それが何なのかは分からない。
でも、後半でそうだったのかと分かり、最後の最後のページまで読んでその結末が分かる。
たぶん、子供には難しいですね。
でも、絵本ならではというんでしょうか。不思議な余韻の残る作品で好きです。 (tori.madamさん 30代・ママ 女の子7歳、女の子4歳)
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