
絢爛豪華に花開いた平安王朝の珠玉の名作を、人気作家による新訳・全訳で収録。最古の物語「竹取物語」から、一人の女性の成長日記「更級日記」まで。千年の時をへて蘇る、恋と冒険と人生。
「もの」を「かたる」のが文学である。奇譚と冒険と心情、そこに詩的感興が加わって、物語と日記はこの国の文学の基本形となった。――池澤夏樹
竹取の翁が竹の中から見つけたかぐや姫≠めぐって貴公子五人と帝が求婚する、仮名による日本最古の物語、「竹取物語」。在原業平と思われる男を主人公に、恋と友情、別離、人生が和歌を中心に描かれる「伊勢物語」。「虫めづる姫君」などユーモアと機知に富む十篇と一つの断章から成る最古の短篇小説集「堤中納言物語」。「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとしてするなり」、土佐国司の任を終え て京に戻るまでを描く日記体の紀行文、紀貫之「土左日記」。十三歳から四十余年に及ぶ半生を綴った菅原孝標女「更級日記」。燦然と輝く王朝文学の傑作を、新訳・全訳で収録。

古文というと解らないなりに部分かじりした、中高のつまらなかった授業を思い出すのですが、現代語訳で通読してみると、なんとも刺激的な世界だったことを痛感しました。
それは、名だたる作家たちが遊び心と本気モードで、自分の世界に作品を、引きこんで書いているからでしょうか。
竹取物語のかぐや姫は、いかにも人間臭く計算高く感じました。
歌を基軸に描かれた伊勢物語では、男女の様々な心風景が、歌に現実感を持たせていました。
堤中納言物語では、なんともあっけらかんとした男女関係に、その時代の道徳観の薄さを感じました。
更級日記では、女の一生が現代とあまり距離感なく描かれていました。
中でも圧巻は土佐日記でしょうか。
あえてひらがなの文体にこだわった上で、女の心で綴ろうとしても、自分の男がついつい顔を出してしまう、紀貫之になりきって書かれた文章は、読みづらさの中でとても新鮮でした。 (ヒラP21さん 60代・その他の方 )
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