あかいてぶくろのみぎとひだりは、いつも一緒に出かけます。ちびちゃんの小さな手が冷たくないように、ふっくらふんわり包むのです。
ちびちゃんが雪だるまを作れば、そっと力を合わせて手伝い、夜になればストーブの前に並んで、また明日ちびちゃんのためにふわふわでいてあげることを約束するのです。
ところがある日、ちびちゃんはみぎのてぶくろをなくしてしまいます。通ってきた道を探しまわるのですが、どこにも見当たりません。離れ離れになってしまった、みぎとひだり。今頃どうしているだろうかと、お互いを思うのですが……。
ちびちゃんの手をつつんでいる時も、雪の中で埋もれそうになっている時も、こうさぎやのねずみたちを温めている時も、その存在感を放ち続ける真っ赤なてぶくろ。少しずつほつれていくけれど、決して悲しい気持ちに覆われてしまわないのは、それぞれの場面を丁寧に繊細に、そして温かく描いてくれているからでしょうか。読み終わってみれば、ちびちゃんも、みぎもひだりも、なんだか頼もしく見えてくるのです。
幸せの形はそれぞれ。たくさんの人たちの心を包み込んでくれそうな、素敵なあかいてぶくろのお話です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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