目を凝らせば見えてくる 『夜をあるく』 【NEXTプラチナブック】

ママが真夜中にぼくたちの部屋のドアを開け、ささやく。
「やくそく、おぼえてる?」
ぼくたちは、おしゃべりもせず着がえ、家族4人で玄関を出る。夏の夜は静かで、アヤメとスイカズラのにおいがする。窓のあかりが輝く大きなホテルの横や、ぼんやりと灯る町はずれの家の前を通りすぎ、どんどん歩いていけば、やがてそこは山のふもと。暗さに目が慣れてくると、感覚がどんどん研ぎすまされていくよう。木の皮のにおい、枯れ枝がぽきりと折れる音、さわさわと揺れる大きな木々の葉っぱ。
家族4人で訪れる夜の森。そこにあるのは、特別な体験。湖に映る月。草むらに寝っころがって見上げる星空。険しい山道。そして……。
深く美しい、青い景色で始まるこのお話。照らされているのはほんの一部。その暗さはずっと続く。それでも目を凝らしていけば、何もかもがしっかり見えてくる。家族と一緒だからこそ、わくわくできる真夜中の時間。こんな冒険ならしてみたい!
フランスから来たこの絵本。たとえ冬だとしても、昼間だとしても、こんな景色が身近になかったとしても。読み終われば、まるで一緒に体験したかのような清々しい気分に。最後のページのまぶしさを味わいながら、少し計画を立ててみようかと考えてしまいますね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

真夜中に、お母さんに起こされたきょうだい。「やくそく、おぼえてる?」と、家族4人で夜の中へ出かけていきます。夏の夜は静かで、あかりが灯っていたり、遠くから音が聞こえてきたり、においにも敏感になります。やがて景色は町から自然の中へ。くらい山道、池に映る月、満天の星……そして、険しい山道を登っていった先では、うつくしい日の出が家族を迎えます。

日の出を見るために夏の真夜中に家を出発した家族4人。実際どれくらいの時間歩いているのかは分かりませんが、家を出てホテル、牧場、列車が走るところを見て森に入り、湖も通って岩を登って行く…というルートが身近にあるなんて、なんて楽しそうなんだと思いました。子ども達が大きくなったらこういうお散歩をやってみたいなと思いました。
絵がとても綺麗で、日が昇ったときの眩しいこと。4歳の娘も一人で初めて見ていたとき、感動してキッチンにいる私のところへ走って見せにきてくれました。 (marimeさん 30代・ママ 女の子4歳、男の子2歳)
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