蝶ネクタイに山高帽、縦縞スーツ姿のおじさんが道を歩いています。「だいすきな にがむしケーキやさんの マロングラッセ かってかえりましょう」と歩く姿は軽やか。
「にがむしケーキやさん」……? へんてこな名前も気になるところですが、次のページで状況は暗転。「ドッチャンコ」とクマにぶつかったおじさん、いや、紳士。マロングラッセは道に散らばり、大きなたんこぶができて、ヨレヨレと「アザラシやっきょく」へ。アザラシのお姉さんに手当をしてもらったのですが、やっぱり、たんこぶが痛くて……。
あれれ、マロングラッセのお話のはずが、いつのまにかたんこぶのお話に……。そう思いながら、目を回した紳士につられるように、絵本の世界に迷い込んでいきます。
5歳の息子と寝る前に読んだところ「マロングラッセ」が分からなかったようで「大きな栗をまるごと1個、甘ーく煮たお菓子だよ」と説明しました。「ふーん」と言いながら、じっと絵本の中をのぞきこむ息子。読後は「……クマさん、やさしい」とつぶやいて満足そうに眠りにつきました。
本書の作者・だるま森さんは、絵画や造形、人形劇など幅広いアートを手がける「総合工芸芸術家 だるま森」としてこれまで子ども向けのパフォーマンスを披露してきた方。このたび第37回日産童話と絵本のグランプリ、絵本大賞受賞し、絵本作家デビューとなりました。遊び心が詰め込まれた世界観、クセになりそうです。次の作品が楽しみ!
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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