
「黙食・孤食」「スマホ依存」をいっしょに解決! バラバラの家族を再び結びつける心あたたまる物語
年少者も重症化しうる新型コロナ変異株の出現以降、保育園・幼稚園や小学校でも昼時の「黙食」が原則化しはじめました。感染対策として個包装の簡易給食にきりかえる自治体もあり、おしゃべりができない味気なさとあいまって、食欲がわかない子も少なくないようです。 いっぽう若年層の「孤食」の問題は、すでに1980年代から指摘されていました。家庭環境によっては一定の頻度の孤食は避けられませんし、長じてのちは「ひとり飯」が気楽な日もあるでしょう。ただある時期から、食卓をともにしながら会話もなく、めいめい何らかのメディアに夢中という光景が珍しくなくなりました。そしてコロナ禍により、家庭内感染への懸念もあって「各自携帯端末を眺めながらの黙食=実質上の孤食」が常態化してはいないでしょうか。子どもたちはいま、食卓で感情や思いを共有する体験を奪われると同時に、装置に依存する生活をしいられようとしています。『スマホ脳』の著者A・ハンセンが示唆するように、技術全体主義のもとで携帯端末がライフラインになってしまうと、画面上の点滅に人生を支配されかねません。 本書は世界的な絵本作家が、こうした時代状況を鋭敏にとらえて描いた「家族の食卓」をめぐる寓話です(原題はOur Table=「わたしたちの食卓」なので、非血縁関係も含みます)。この家のテーブルは日ごとに存在感を減じており、それに気づいているのはおさない長女だけです。彼女はまたこの現象が、じぶん以外の家族が各々専用の端末をもっていることと関係があるのもわかっています。さて、装置(デバイス)への隷従から解放され、共有(シェア)と互いへの関心(ケア)の時間をとりもどすために少女がとった痛快な解決策とは…? きわめて現代的な主題(コロナ禍・孤食・黙食・スマホ脳)と普遍的な主題(ともにすごす時間の有限性)がみごとに融合した、今秋最大の話題作です。(しまづ・やよい)

ヴァイオレットという名前も、紫色で描かれる世界も、紫色のテーブルも、不安感と悲しみでいっぱいです。
その象徴性から、強いメッセージを感じました。
かつては家族みんなの憩いの場所で、共有空間だった場所が、それぞれが自分の世界にこもるようになって見向きもされなくなっていきました。
そして小さく小さくなって。ついに消えてしまいます。
テーブルは、ヴァイオレットという女の子自身です。
この孤独感、存在感をそのままにしていたら、家族の一人がいなくなってしまうような恐怖感さえ感じられました。
コロナ時代を象徴する絵本になっています。
この絵本では、もう一度家族みんなでテーブルを作ろうとするところから、色彩を帯びていきます。
家族みんながもう一度出会う場所として、テーブルが完成します。
ヴァイオレットも、もう紫色ではありません。
家族の大切さを改めて痛感させてくれました。 (ヒラP21さん 60代・その他の方 )
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