
「むかし、ある家に、花をさかせたがらない 小さなキャベツがありました」と始まるフランスの昔話。その家のお母さんが、アントワネットちゃんに「小さなキャベツにお水をやっておくれ」とたのむと、アントワネットちゃんは「いやだよ。お散歩するほうがいいもの」。
そこでお母さんは子犬に「アントワネットちゃんにかぷりとかみついておくれ」「お水をやってくれないから、小さなキャベツが花をさかせてくれない」と言いますが、子犬も断ります。そこでお母さんは、小枝のところへ、次は火のところへ行きますが、次々に断られ……。
これは昔話によくある、出来事がどんどんつながっていく、だんだん話とか累積譚(るいせきたん)と呼ばれるもの。「かみついて」なんて聞くとこわそうですが、大げさなやりとりや出来事の連なりを、子どもは面白がります。だって、お母さんが子犬、枝、火、肉屋……ついに死神のところまで行くのは「キャベツに水をやってほしい」というその1点なのです。お手伝いの話が、死神まで到達してひとまわりして戻ってくるおかしさは、昔話ならではですね。
ヨーロッパにはさまざまなだんだん話があり、グリム童話絵本で著名なフェリクス・ホフマンによる『ヨッケリなしをとっといで』(架空社より2000年刊、現在は絶版)、人気作家スズキコージさんの『ひつじかいとうさぎ』(福音館書店「こどものとも」1975年刊)もよく似た形式のものです。わが家では子どもたちが大好きで、本書を読んで、ほかにもどんなだんだん話があるのか探してみたいと、わくわくしています。
本書は「女の子の昔話えほん」シリーズの1冊。男性主人公が多い昔話の中で、女性がお話の主役となるさまざまな伝承を集めているのが特徴。お話自体は、男女関係なく楽しめます。 絵を描いたのは、本書が絵本デビュー作となる、うえのあおさん。やさしい色合いと、登場人物の表情にも注目してみてくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)

おてつだいをしたくない女の子と、 おてつだいをしてもらうために、どこまでもでかけるおかあさんが主人公!
女の子がキャベツに水やりしたくないといったので、 おかあさんは、子犬や小枝、火や水と、いろいろなものに、たのみにいきます。 最後にでてくるのは、なんと……!? フランスにつたわる「だんだん話」の昔話が絵本になりました。
::::::::::::::::::::::::: むかし、あるいえに、花を さかせたがらない 小さなキャベツが ありました。 あるひのこと、そのいえのおかあさんは、 アントワネットちゃんにたのみました。 「アントワネットちゃん。小さなキャベツにおみずをやってちょうだい。」 ところが、アントワネットちゃんはいいました。 「いやだよ。おさんぽするほうがいいもの。」 そこで、おかあさんは、こいぬのところへいきました。
(本文より) :::::::::::::::::::::::::
昔話の主人公は男の子ばかり? そんなことありません!
世界と日本で語りつがれてきた 女の子と、大きくなった女の子たちの昔話を 絵本にして、おくります。 いろんな女の子が主人公の絵本シリーズです。

すごい飛躍の連鎖に驚くばかりのお話です。
小さなキャベツへの水やりを拒んだ娘に対して、お母さんは小さなお仕置きを思いつきました。
お仕置きを頼まれた小犬がそれを拒んだために、お母さんは小犬にもお仕置きを考えるのです。
この連鎖は、お母さんが死神に殺人を依頼するまでにエスカレートします。
事態は遡りを始めて、小さなキャベツへの水やりをすることができました。
結果オーライの笑い話ではあります。
でも、こんなモンスターのようなお母さんを想像すると、身の毛がよだちます。
どうしてお母さんは自分で水やりをしないのでしょう。
お仕置きとしつけは別物です。
この寓話を笑ってばかりいられないのは、考えすぎでしょうか。
些細なきっかけの蓄積が、子どもの虐待死にいたらせた事件を思いおこしてしまいました。
大人にとっては意味深い絵本です。 (ヒラP21さん 60代・その他の方 )
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