荒れた海の中、大破してしまった船。遭難した男の人と女の子と犬が命からがらたどり着いたのは、小さな「しま」。一息ついて空をあおぐ彼らのその場所は……大きなカメの甲羅の上だった!
こうして3人とカメとの共同生活が始まるのです。小さな「しま」の上で何とか暮らすための工夫を重ねる3人と、海の下では繰り返し訪れる危機を3人に知られることなく回避し続け、暮らしを守りつづけるカメ。やがて、彼らの視線の先に大きな船が通りかかり……。
海の上と下で繰り広げられる壮大なスケールの物語。ところがこの絵本には字がありません。すべてを「絵」だけで読みといていくのです。それでも、そのことを忘れるほどファンタスティックで美しい海の世界が目の前に広がっていき、読む人が自然にそれぞれ自分だけのお話を生み出していくのでしょう。
オランダの人気作家マルク・ヤンセンが描いた「字のない絵本」。これまで世界15か国で出版され、日本でも嬉しい初翻訳。海の色がこんなにも豊かで魅惑的なものだったなんて。一目見て夢中になってしまうほど、鮮烈な場面の繰り返し。今年の夏の忘れられない1冊になりそうです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
大荒れの海。男性と女の子と犬を載せた船は、自然の猛威の前に大破。遭難してしまいます。命からがらたどり着いたのは「しま」。でもそこはカメの甲羅の上だったのです……。『しま』は字のない絵本です。ヤンセンさんの、深みがあってさわやかで、心地よい夢のなかにいるような絵は、読む人の数だけものがたりが生まれることでしょう。字のない絵本はたくさんありますが、『しま』は絵を「読む」絵本です。
言葉のない絵本です。
躍動感があって、絵の進行の中で、壮大な冒険譚を想像させられて、ワクワクドキドキさせられました。
自分なりに物語を考えてしまいました。
嵐で難破してしまった船に乗っていたのは、お父さんと娘と1ぴきの犬。
破片につかまって漂流していると、小さな島がありました。
小さな島に上がってふたりと愛犬は助かるのですが、その島は大きな亀の甲羅の上にあったのです。
ここから,小さな島を乗せた大きな亀によって、島は氷の海や熱帯を旅して回るのですが…。
大きな亀を呑みこもうとする巨大な魚に、亀は遭遇しました。
このページの飛躍が、この物語の難所です。
家族は通りかかった大型客船に救助されるのですが、女の子は自分たちを助けてくれた大きな亀に向かって、海に飛び込みます。
海中へ潜っていく亀と、女の子はどんな世界に向かっていくのでしょう。
予想を上回るラストシーンなので、自分で考えた物語も海に放り出されてしまいました。
これだけ波乱に富んだ物語だけに、なんとか完成させたいのですが、そんな楽しみのある絵本です。
言葉のない絵本は、こんな楽しみも与えてくれます。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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