引っ越したばかりのヒナちゃんは小学三年生。まだクラスに、仲のいい子がいません。
「……学校に、いきたくないな」
ねむい目をこすりながら、歯ブラシをぱくんと口にくわえたその時、いきなり歯ブラシがぐにゃぐにゃと動き出した。思わずほうりなげると、そこにいたのは小さなワニ! しかも人間のように話しはじめたのです。名前はガルド。さびしい人にだけ見える「おばけ」だというのです。
この日から、ガルドとひなちゃんのおかしな日々がはじまります。学校に行けば、ガルドもかまわずついてきて、教室の中にまで入ってくる。ガルドが川に行きたいというから、つれていってあげると気持ちよさそうに泳ぎながら魚を美味しいといって食べている。おばけだから、教室のみんなには見えないはずのガルド。けれど、こちらをじっと見ている子がいます。大勢の子に囲まれて人気者に見えるアヤカちゃんです。どうしてガルドが見えるのでしょう。そんなある朝、教室に入るなりアヤカちゃんが走ってきて……。
絵本作家・漫画家のおーなり由子さんによる、ワニのガルドとヒナちゃんの、ちょっとおかしくてあたたかな物語。さびしい気持ちというのは、いつどんな時もふとやってくるものです。それは、友だちができたって同じこと。けれどヒナちゃんは、そんな時にどうしたらいいのか知っています。それは、ガルドとの出会いのおかげ。何だかうまく友だちができないな、なんて思っている子がいたら。全ページに入っているカラーの挿絵で愛らしいガルドとヒナちゃんが迎えてくれるこの本を、いつでも読んでみてくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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