むかし、とても大きな家にマリーという女の子がすんでいました。この家のすみには、ネズミの女の子がすんでいました。
ふたりは家族構成も同じならば、行動も同じ。まいあさそれぞれ学校へいき、同じように過ごします。
あるばん、ゆうはんの後片付け中に、ぐうぜんフォークをおとしたマリーは、同じくぐうぜんスプーンをおとしたネズミと壁越しにばったり顔をあわせます。
互いに意識しながら、遠くのほうから手をふりあい、ないしょの友情をはぐくむ、マリーとネズミ。
やがてマリーは大きくなり、ネズミも大きくなって、家を出ていきますが・・・。
作者ビバリー・ドノフリオは、自伝的小説『サンキュー、ボーイズ』がベストセラーとなり、映画化もされた、現代アメリカの小説家。『ないしょのおともだち』がはじめての子ども向けの作品ですが、本書は日本で翻訳出版されてあっという間に、日本の子どもたちのお気に入りに仲間入りしました。
大人はきっと人間とネズミがともだちなんて、と顔をしかめるに決まっているから、ふたりは「ないしょのおともだち」だったわけですが、この「ないしょ」がとにかくすてきな響き!
さらに本書をいい雰囲気にしているのが、バーバラ・マクリントックの精緻な絵。彼女の独特の作風は、18世紀の石造りの家にすむ祖父母のもとでビクトリア朝の家具に触れるなど、幼い頃の経験が影響しているそうです。
たしかに前半のマリーの家はりっぱなお屋敷風ですが、成長とともに部屋はモダンになり、敷物は横縞もようへ。ネズミの敷物も横縞で、よく見ると靴下! 描きこまれた絵が、私たちを楽しませてくれます。
発売翌年の2010年には『この絵本が好き!』(平凡社)の海外翻訳絵本部門第1位に選ばれ、MOE絵本屋さん大賞の6位に入賞するなど、絵本好きのハートをがっちりつかんだこの絵本。
マリーとネズミが大きくなり、家族をもち、互いに娘が生まれたその後・・・。時が流れた後半部分が、ますますこの絵本のみどころです。
そのふたりの娘たちが主人公となる続編、『ないしょのかくれんぼ』も出版されています。2冊とも、大型絵本で見ごたえたっぷり。ぜひ、あわせて堪能してくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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