
このライオンの顔!説明なんかなくとも、作品全体に漂う気迫というものは伝わっているかと思います。 広がる大地を背景に、豊かで立派なたてがみ、大きな前足、鋭い牙をのぞかせながら堂々と佇む百獣の王。 うなり声や息遣いまで聞こえてきそうなその緊迫感あふえる描写に、目が釘付けになります。 一方、たくさんの動物が住む自然界の中でも極めて小さい存在なのがねずみ。 地面の片隅を、あちらこちらと駆け回ります。 あまりにも対照的なその2匹が出会ったとき・・・。 文章はほとんどなく、ガルルル、チュッチュッ、ザリザリザリ・・・擬音が効果的に耳に響いてきます。 「そうか、イソップのライオンとねずみはこんな物語だった」と、その物語の真髄が理解できるのです。 絵本って本当に素晴らしい、心底そう思える作品に出会えた幸せをかみしめることができる一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

ライオンの背を、ねずみがうっかり駆け上がりました。ご恩返しはしますから、と命乞いするねずみを、鼻で笑って逃がしたライオンでしたが……。イソップの『ライオンとねずみ』を迫力のイラストで語る、2010年度コルデコット賞金賞受賞作。

表紙からインパクトがあります。
題名がない?
そうなんです。
題名は背表紙に書かれているだけ。
あとは全て、絵が物語ります。
文字はせいぜい、フクロウやライオンの鳴き声の部分だけです。
イソップものがたりの中の有名なお話ですから、
思い出す人もたくさんいると思います。
ねずみは天敵から逃れて一息と思いきや、ライオンに捕まりますが、
うまく逃げ延びます。
ところが、ライオンは、あろうことに人間のわなに引っかかり、
ネットの中へ。
そこへ、ねずみが恩返しをする、というストーリー。
独特のカメラワークが臨場感たっぷりです。
写実的な絵なのに、ライオンやねずみの心情が伝わってきます。
特にライオンとねずみ、両者の瞳に命が宿っています。
そして、きちんと描かれている、両者の家族。
そのあたりもしっかりと感じ取ってほしいですね。 (レイラさん 40代・ママ 男の子17歳、男の子15歳)
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