
カル少年は、高い山の上に住んでいるので、学校へ通うことができません。もちろん図書館なんてないし、本を読みたいと思ったこともありませんでした。ある日、馬に乗った女の人が、カルの家に本を持ってやってきて……。いまから80年ほど前、アメリカは不景気の時代で、だれもが貧しくはありましたが、子どもに本を読ませたいという気持ちを忘れませんでした。学校も図書館もない不便な所で生活をしている子どもたちのために、図書館の本を届けようと考え出されたのが、「荷馬図書館員」という職業でした。彼女たちは「ブック・ウーマン」と呼ばれ、馬に乗って、暑い日も、寒い日も、どんなに遠い道のりでも、ひたすら子どもたちの手もとに本を届けたのです。

馬に乗って僻地まで本を届けるブックウーマンと、初めは興味を示さなかった本を手にとって読書に喜びを見いだすようになっていく少年の姿は、感慨深いものでした。
あとがきで知った荷馬図書館計画には驚かされました。
インターネットはおろか、テレビ放送もない時代に、本の役割は今とは違います。
日本で公共図書館か普及したのは戦後ですし、教科書が無償化されたのも、私の小学校入学の少し前です。
90年ほど前の世界恐慌の時代、遠隔地であっても「空気と同じように無料で本が届けられる」という政策が素晴らしいと思います。
今も世界のどこかで、本を必要としている人々に本を届ける活動をされている方々や、移動図書館などに携わっている方々に思いを馳せました。 (みいのさん 60代・その他の方 )
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