ゆうじが野原で模型飛行機を飛ばしていると、森のきつねがやってきて言うのです。
「いいひこうきだなあ! そのひこうきを ちょうだい」
だけど模型飛行機はゆうじの宝物。そこで、きつねの宝物だという「そらいろのたね」ととりかえることになりました。
家に帰ると、ゆうじはそのたねを地面に植えて、水をたくさんかけてみます。すると次の朝、そこにはえてきたのは……小さなそらいろの家!
「うちが さいた! うちが さいた!」
大喜びのゆうじがさらに水をかけると、その家は少しずつ大きくなっていき、ひよこやねこ、ぶたが遊びにきます。おひさまの光をあびて更に大きくなった家には、おともだちがたくさん入っていきます。家はどんどん大きくなり、町じゅうの子どもたち、森じゅうの動物たちまで遊びにきました。なんて素敵、なんて立派な家なのでしょう。ところが、再びきつねがやってきて……。
その素朴で愛らしい絵を見れば一目でわかる通り、作者は絵本『ぐりとぐら』コンビの中川李枝子さん&大村百合子さん。このお話の中で一番ワクワクする瞬間は、何と言っても家が地面から生えてくる場面! こんな驚きはないですよね。しかも、どんどん大きくなっちゃうんです。お話を聞きながら、絵を味わいながら、読んでいる子どもたちの夢もどんどん大きくなっていき、ふうせんみたいにパンパンにふくらんだその瞬間、パチン! 潔くはじけ飛んでしまうのも、お二人の作品ならではの楽しいリズム。
なんどでも繰り返し読みたくなっちゃうこの絵本。絵本のどこかに、お馴染みのキャラクターがこっそり登場するのも楽しみのひとつですね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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