ふぞろいで、まるで紙をちぎったかのような青と黄色の「まる」。
それがこの絵本の主人公です。
目も顔も手足もないけれど、ただの青と黄色の「まる」は、確かにストーリーの中を生き生きと動き回り、感情をあらわにし、涙を流すのです。
この不思議な絵本が、レオ・レオニが自らの孫のために作ったという、世界中で愛され続ける絵本『あおくんときいろちゃん』。とっても実験的な絵本の様にも見えるけど、これが小さな子どもたちに大人気。子どもたちの想像力というのは、大人が思っている以上にずっと柔軟で自由なのだと改めて気づかされます。
おはなしは、あおくんの紹介から始まります。
あおくんのおうちには、パパとママ。
お友だちもたくさんいて、みんなそれぞれとっても美しい色をしています。
でも、一番の仲良しはきいろちゃん。
ある日、お留守番を頼まれたあおくんだけれど、どうしてもきいろちゃんに会いたくて、遊びに出かけてしまいます。そうして出会ったふたりは、嬉しくて嬉しくて「みどり」になってしまうのです。そのまま家に帰ると、あおくんの家でもきいろちゃんの家でも「うちのこじゃない」と言われてしまい、大粒の涙を流すのですが……。
物語の終盤になってくると、いつの間にかふたりに感情移入をしている自分に驚きます。表情は見えなくとも、その悲しみや喜びをはっきりと感じとることができるのです。これが色の持つ力でしょうか。おはなしから刺激される想像力でしょうか。嬉しすぎて色が重なり、全く違う「みどり」になるという現象は、何年経ってもずっと心に残る出来事となっていくでしょう。
年齢を超えて、味わってもらいたい絵本です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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絵の具で描かれた青や黄色のまるが生き生きと動きまわり、絵本ならではの夢と感動をもたらしてくれる。作者が孫のために作ったという人間愛あふれる絵本。
この絵本の作者レオ・レオーニは長年アメリカで、もっとも活躍した芸術家の一人です。その多彩な創造力は絵画、グラフィック・アート、デザインの各分野で示されています。 1910年アムステルダムに生れ、29才でアメリカに渡りました。アメリカでは創作のかたわらすぐれたアート・ディレクターとして多くの仕事をし、賞も受けています。 すでに古典といわれるこの絵本はレオーニが孫たちにお話をせがまれた時、ぐうぜん生れたものです。手近の紙に色をつけて次つぎに登場人物を創りだしながら、孫たちもレオーニ自身も夢中だったといいます。 アメリカでは、この絵本の、青と黄とが重なってまったく違った緑になるというテーマが、人と人の心の融和を暗示するものとして、おとなたちの間でも好評を博しています。(表紙カバーより)
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