
●ノルウェー文化省・教会省「児童文学賞」受賞作品
ぼくはボイ。パパとママの3人で暮らしている。 でも、ぼくとママはいつもパパの機嫌を気にしている。 ある日のこと、パパの様子がおかしい。 ママはぼくに「静かにするのよ」って言う。パパどうしちゃったの。 ぼくが何かしたの? パパ怒っているの? 「怒ってなんかいないぞ」とげとげした声でパパが言う。 パパのなかの「怒り鬼」が大きくなって、パパはもうパパじゃなくなる。 そしてとうとう、ぼくを守ろうと立ちはだかるママに 「怒り鬼」はどんどん近づいて……。
〈話すことで、外の世界への扉が開く物語〉 パパが暴力をふるうのは「自分が悪い子だから」と考え、 家の事はしゃべってはいけないと辛抱していたボイでしたが、 ある日、「誰かに話してごらん」と風や木や小鳥たちにはげまされ、 王様に手紙を書くことで、物語は大きく展開していきます。 この作品は、「悪いのは暴力をふるう大人のほう」というメッセージを伝えるとともに、 DVに対しては、周りが早く気づいてあげること、 がまんしないで助けを求めてもいいこと、そして暴力をふるう当事者自身が かわる努力をしなければならないことを訴えかけています。
原作は、2009年に映画化(日本公開タイトル「アングリーマン」)され、 広島国際アニメーションフェスティバルでグランプリを獲得したのをはじめ、 世界各国で高い評価を受けています。
〈読者対象について〉 作品の文学性、絵画性から、小学校低学年以上のあらゆる年代層が対象になると考えられます。 DV関係団体はもとより社会教育関係等々さまざまなニーズもあると思われます。
〈著者紹介〉 作/グロー・ダーレ 1962年オスロ生まれ。ノルウェーとアメリカで幼少時代を過ごす。 オスロ大学などで心理学、思想史などを学び、詩集『Audiens』でデビュー。 2002年『いい子』でブラーゲ賞(ノルウェーで最も権威のある文学賞)を受賞するなど 受賞歴多数。 絵/スヴァイン・ニーフース 1962年トンシュバルグ生まれ。オスロ国立美術大学でグラフィックを専攻。 雑誌や新聞などでイラストを描いていたが、1995年以降、 妻のグロー・ダーレとの共作に力を入れている。


タイトルからすでに内容は想像できるのですが、絵本の中に封じ込められたこの緊張感は何でしょう。
お父さん思いの(?)子どもの、痛々しいほどにお父さんに対する思いの繊細さと、くるんだような言い回しは何でしょう。
マインドコントロールという言葉が頭をよぎりました。
子どもは自分の素直な気持ちでは動いていないのです。
お母さんにしても同じ。
ですが、お父さんも明らかに心の病に犯されている。
心の中には鬼が住んでいるのだけど、優しいお父さんも同居していて、絵本の中にはガラスのような家庭が描かれているのです。
解決するためには、誰かに助けを求めること。
父親も、自分が怖がられてはいても、憎まれているのではないことを理解できたら、自分の心に住む「鬼」退治を本当に願うならば、この家族はやり直せるかもしれない。
父親として、この絵本から痛烈なメッセージを受け取りました。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子14歳)
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