トリシャは絵を描くことが大好き。おしゃべりもできるのに、学校へ行くようになっても文字も数字も読めません。くねくねした形に見えるだけ。5年生になったとき、新しい先生がやってきたことで…。LD(学習障害)児の心のさけびと感動の出会いを描く絵本。
娘が、どうしても今日これを読みたい、と言って選んだ絵本。
実際には、私が前々から読みたいと思っていた絵本で、他の本といっしょに図書館から借りてきたのですが、10冊以上あった本のすべてに目を通して(娘の好みのきれいな絵やお姫様風のお話もあったにもかかわらず)、自分で選んだのがこの絵本でした。
想像以上に素晴らしい作品で、最後は涙で声が詰まりました。
「しんじられますか? こどもの本を かいているんですよ。せんせい、ほんとうに、ほんとうに ありがとうございました。」
小学校5年生になっても満足に字も読めなかった子が、子どものための本を書き、世界中の子どもたちに自信と勇気、生きていく希望をいっぱい与えているという素晴らしい事実。
おじいちゃんが本にハチミツをたらして儀式をしてくれたのは、トリシャが5歳になったときでした。
濃いオレンジ色のはちみつが、とろとろっと本の上に滴っていくのを見て、娘はびっくり。まだ赤ちゃんの頃から、「本は大切に読もうね」と繰り返し言ってきたので、娘も「本はたからもの」という思いで、大事に扱う習慣が自然と身についていました。
でも、トリシャがはじめて本を読めるようになった夜、5歳のときにおじいちゃんがしてくれたように、その同じ本にハチミツをたらし、「ハチミツは あまーい。本も あまーい。よめば よむほど あまくなる!」と、儀式をしたトリシャに、娘も心の底から喜び、彼女といっしょに感動を分かち合っているようでした。
フォルカー先生がすてきな先生であることは言うまでもなく、先生との出会いがトリシャの人生を変えてくれたのも真実ですが、こういった常識にとらわれない考えをもったおじいちゃんとおばあちゃんの存在もまた同じくらい大きなものだったのではないかと思います。
自分のあるがままを受け止め、包み込んでくれる人がいる・・・自分は愛されているという揺るぎない基盤が、トリシャの心の奥深くにあったからこそ、フォルカー先生との出会いも、よい方向に生かせたのではないかな、と思いました。
「おばあちゃん、わたしって みんなと ちがう?」と、トリシャに聞かれて、
「もちろんだよ。みんなと ちがうってことは、いちばん すてきなことじゃないか。」と、答えたおばあちゃんの言葉を、そのまま我が子にかけてあげたいな、と思います。そして、いつでも、
「おまえは、せかいじゅうで いちばん かしこくて、おりこうで、かわいらしい子に きまってるじゃないか。」と、言い続けてあげたいと思います。
トリシャの心の声が、せかしたり、期待してばかりの毎日の中にいた私の心の目を覚ましてくれました。 (ガーリャさん 40代・ママ 女の子6歳)
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