騒がしい鳥の鳴き声でダヤンが目を覚ますと、そこはボルネオの森!
うるさく鳴いていたのはイチヂクの実を食べているサイチョウでした。
まだまだ眠いダヤンは、聞いてみます。
「きみのねどこはどこ?」
でもダヤンのねどこにするのは無理みたい。がっかりしていると、次に出会ったのは木の上で気持ち良さそうに寝ているビントロング。ところがねぞうの悪いダヤンは落っこちて…!?
ダヤンは森の中でたくさんの動物たちに出会いながら、自分の「ねどこ」を探します。そのうちお日さまが沈んできて、真夜中に。それでもまだ見つけられないダヤン。ちゃんと気持ちのいい眠りにつくことができるのでしょうか。
この絵本が面白いのは、ダヤン以外はみんな写真ってこと!「ダヤンと森の写真絵本」です。
美しいボルネオの森や眠りにつく動物たちの様子を鮮明に写し出しているのは、カメラマンの横塚眞己人さん。
この珍しいコラボレーションが生まれるきっかけとなったのは、池田あきこさんと横塚さんが仕事で一緒にボルネオ島へ旅をされたこと。
ボルネオの原生林の素晴らしさとともに目にしたのは、パームヤシの農園を作るために森がどんどん切り取られていく現実。森に住む動物たちのねどこがどんどんなくなってしまっているそうなのです。
「じゃあバーム油なんか作らなければいいのに」って言っても、そういうわけにもいかない。
まずは森の素晴らしさと、動物たちが困っていることを知ってもらいたい。
そんな共通する強い思いがお二人の中にあり、この作品の実現へとつながったのです。
この絵本が単に絵と写真が融合したものではなく、一つの世界観をつくりだしているのは、旅の出発前にすっかりダヤンとわちふぃーるど物語のファンとなっていた横塚さんが池田さんの視線や考えを共有していたからかもしれません。動物たちは自慢気に大切なねどこを見せてくれています。ベンガルとダヤンは会話をしています。そして、霧につつまれた森の上は確かにダヤンの住む世界となっています。
巻末にはボルネオと、そこに住む動物たちの解説付き。こんなに多様な動物たちの「ねどこ」を包み込んでいるのがボルネオの森なのです。「ねどこ」があるってことは安心して寝られるっていうこと。その大切さがダヤンの目を通して直に伝わってきます。一晩中探しまわって、やっと見つけたねどこにおさまるダヤン。顔中にあふれているその満面の笑みの中に、お二人の願いがつまっているようですね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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