一日に5本だけが通るローカル線の二両列車。
最終列車に乗った一人旅で、気付いたら乗客は皆降りてしまって一人ぼっち。
たぶんすれ違いのない単線、周りは人家のない山の中でしょうか。
この緊張感が伝わってきたと思ったら、いろいろな動物たちが乗り込んできました。
黄色がかった車内風景の中に、いろいろな動物たちが乗り込んできます。
旅行している男には、夢か幻かわからない不思議な世界が展開します。
ネズミが乗ってきて、イノシシが乗ってきて…、次々にいろいろな動物たちが乗ってきて、世間話が展開されます。
日頃人間に抱いている不信感やら、自分たちの境遇に対する愚痴やらが話されて、人間である自分には緊張感のあることばかり。
見つからないように、じっと息をひそめていると緊張感がどんどん大きくなってきます。
そして、動物たちが列車から降りる際にとうとう見つかってしまいました。
何もされずに済んだ安堵感と、車掌さんとの間の抜けた会話が絶妙です。
この絵本は、話の部分と絵が、開くたびに分けられています。
話部分は黒地に白抜き。
読み聞かせには向かないようですが、素晴らしい効果を上げています。
紙芝居のように展開してもよいのではと思いましたが、黒地の話部分に闇の感じがあってそれが良かったようにも思います。
登場する動物の中では、チャボとクジャクの夫婦にしみじみとしてしまいました。
虐げられたもの通しの助け合い。
こんな夫婦が昔の日本社会には不思議ではなかったと思いました。