ヤン・ヴェルズルというチェコの伝説の英雄のお話。
故郷のヨーロッパを出て、極北(北極ではない)の地をめざし、30年におよぶ長い旅を経て書かれた回想録に事実とほら話、ヴェルズル自身の言葉をまぜて作られた物語です。
ヴェルズルは極北を目指す途中の吹雪の中、遭難してしまいます。死にかけた彼を助けてくれたのはエスキモーの狩人たちでした。元気になったヴェルズルはそこに住むようになり、エスキモーたちから多くのことを学びました。お返しに彼は、ゴールドラッシュと毛皮取引のためにやってきたよそ者たちの収奪からエスキモーの人たちを守りました。
『ほら話』とあるように、時にあれれと思うような話が出てくるのですが、それも愛嬌。それよりも自然を愛する人たちの純粋さやその命の恩人たちを守ろうとするヴェルズルの心が強く伝わってきます。
絵も抑え目の色調ですが、彼らの生活が丹念に描かれていたり、パノラマ図のようになっていたりと、それぞれのページを楽しめます。