人はみな、思い出という風船を持っている。
長く生きれば生きるほど、その風船の数は増えていく。
いろんな色の、一つ一つがキラキラと輝くような物語。
でも、その風船をいつまでもずっと持ち続けることは出来ない。
おじいちゃんが一つ、また一つと風船を飛ばしていく様子は、読んでいて切ない気持ちになりました。
おじいちゃんが大好きで、風船のお話を聞くことが楽しみだったぼくにとって、自分との特別な思い出の風船を飛ばされたこと、そして自分の名前さえ忘れてしまったこと、どんなにか悲しかったことでしょう。
認知症を題材とした絵本は初めて読みましたが、思い出を風船という形にしたことで、子どもにも分かりやすく、また心に響くお話でした。
思い出を失うことは悲しいけれど、その思い出は受け継がれていく。同じ色の風船は消えて無くなることはないのです。
全編白黒をベースとしながら、その中で色とりどりの風船が美しく、心に沁みました。