このお話に初めて出会ったのは、数年前。NHKの「おはなしのくに」でした。
頬を伝う、滂沱の涙。
きょとんとする幼子の前で、おいおいと、つっぷして泣いてしまいました。
このお話、実に完成度が高いです。
子供だけに読ませておくには、実に惜しい本です。
きつねのお母さんが、こぎつねを愛している様は大変ほほえましく、
この後に待っているこぎつねの死は、読んでいる方も、身をちぎられるような悲しみを感じます。
彼女が感じる苦しみ。誰にも埋める事の出来ない心の穴。
つらさを乗り越えようとするお母さんぎつねの姿には、
それだけで心を揺さぶられます。
そして、お母さんぎつねは人間の男の子に出会います。
自分の子供と、こぎつねを重ね合わせる彼女。
電話をかける男の子の言葉に、返事をしてしまうこのお母さんぎつねのところでは、何度読んでも泣けてしまいます。
(ただ、残念ながら、この部分の理解が、うちの子供にはまだ難しかったようです)
ああ、だめだ、また涙壺に入ってしまう、と思いながらも、
この本を読むのに、涙無しではいられません。
お話の最後はぜひ、この感動をまっすぐに味わっていただきたいので、ここではお話しませんが、
期待を裏切らない、胸を打つすばらしい作品だと私は太鼓判を押したいです。
最初はただ苦しく、苦かった涙が、最後には、温かい涙となっていることでしょう。
ただ…読み聞かせの前には、必ず一度、目を通されることをおすすめします。
でないと、わたしのように、大号泣してしまうかもしれませんから。