人はどのようにして本に出会うのだろうと
時々考えてしまうことがある。
堀川理万子さんの『海のアトリエ』という絵本を知ったのは、
NHKEテレで2022年12月から2023年1月にかけて放送されていた
「趣味どきっ! 読書の森へ 本の道しるべ」であった。
この番組では8人の本好きの人が
本について語るというもので、
堀川さんはそんな8人の中の一人だった。
堀川理万子さん。
1965年東京生まれ。画家として絵画作品による個展を定期的に開きながら、
絵本作家、イラストレーターとしても活躍してる人。
ただし、私はこの番組を見るまで
堀川さんのことも『海のアトリエ』のことも知らなかった。
『海のアトリエ』。
2021年5月に出た絵本。
絵本といってしまうと、どうしても幼児向けの出版物と思われがちだが、
この絵本はもっと幅広い読者に向けて描かれている。
この作品で、Bunkamuraドゥマゴ文学賞、講談社絵本賞、小学館児童出版文化賞を受賞。
堀川さんの代表作といっていい。
物語はいやなことがあって学校に行けなくなった少女と
そんな彼女を1週間だけ預かることになった画家の女性との交流を描いている。
画家のアトリエがあったのは海の近く。
そこで少女はなんとも緩やかな生活を送ることになる。
もちろん、女性のアトリエにはたくさんも本もある。
海岸で髪を風になびかせている少女と画家の姿に、
もしかしたら私たちが忘れているとても大切なものがあるように思えた。
人が一冊の本と出会えるのは
大きな偶然の営みかもしれない。
けれど、その偶然こそ大切なものに
この絵本と出会えて、思えた。