この本のことは、小泉今日子さんが読売新聞に掲載した書評を集めた『小泉今日子書評集』で初めて知りました。
2007年に理論社から単行本で出て、今では新潮文庫に収められていますから、たくさんの愛読者がいる一冊になっています。
この本のことを小泉さんは「何冊も買っていろんな人のお誕生プレゼントにしました」と書いていました。
なんとも不思議なタイトルの本を誕生日プレゼントにもらった人は、一瞬きょとんとなるかもしれません。でも、せっかくもらったのだからと、読んでみて、初めて贈ってくれた人のあたたかさがわかるのではないかと思います。
だから、もし、この本を誕生日プレゼントでもらったら、とっても大切にされていると思って下さい。
小泉さんは、また、こんなことも書いています。
「子供の頃にこの物語を読んだら私は何を感じ、何を考えたのか知りたくなった。」
それは少し違う気がします。多分、この本にはいっている話は子供だけでなく、十代でも二十代でも感じ方が違うと思います。結婚して(しなくてもいいのですが)子供が出来て読むとしたら、ハードな仕事を任された時に読んだとしたら、定年になって仕事を辞めたときに読んだ時も、また違った読み方になるような気がします。
私が読んでみたいと思うのは、もう間もなく命の灯が尽きようとしているその数時間で、この本を読んだら、「何を感じ、何を考えたのか知りたくなった」です。
この本には7篇の動物寓話が収められています。
私が好きなのは、「ないものねだりのカラス」。この話はみんなに嫌われていたカラスがシラサギと友だちになって温かな気持ちになる話。
こんな素敵な文章があります。「ただのにぎやかなだけのおしゃべりは、心からの言葉とは違う」。
この文章に出会っただけでも、この本を読んだ値打ちがあったような気持ちがします。
でも、きっともっと若い時に読んでいたら、別の作品がお気に入りになったかもしれません。そのことがわからない。それがとっても残念で仕方がありません。