はたから見ていると、「なんて馬鹿な男だろう」と思ってしまいそうですね。
しかし、ハンスはしあわせなのです。
7年間勤めた仕事場からそろそろ帰る時期になったハンスは、親方から金の塊を受け取りました。
7年間の仕事に対して、親方の評価はとても高いものだったのです。
しかし、ハンスにとっては思いだけでありがたみがないのです。
金の価値は分からないけれど、馬の便利さは分かる。
ハンスは金より価値の高いと思った馬と金の塊を取り換えてしあわせです。
ところが馬はハンスを振り落してしまいました。
そんな乱暴な馬よりも牛の方が良いとハンスは考えます。
それから、いろいろとものを取り換えて、最後には金がとぎ石にまで替わりました。
金の塊がただの石に替わってもハンスはしあわせなのです。
石が重く感じられるようになったとき、水をのもうとした井戸に石が落ちてしまいました。
何もなくなったのに、ハンスは解放されてもっとしあわせになりました。
はたからみていると馬鹿げた話ですが、こんなしあわせの感じ方の間違いではありません。
周りを見渡せば、価値観の違いで似たような話がありはしませんか。
ワッツさんは、最後の絵でしあわせなハンスと母親を描きました。
金の塊が最後には何もなくなってしまったことを知って、母親はどう思ったでしょうか。
そんなことがあってもお母さんは、子どもが帰ってきてくれたことで充分にしあわせだとしたら、とても素晴らしいことではないでしょうか。
ところでワッツさん。
登場人物はみなファンシーなキャラクターなのは何故でしょうか。
ワッツさんの世界になっています。
なんだが、ほのぼのとした気持ちで読み終えました。