ボタンが主人公のお話なんて、これが初めて!赤いぼたんちゃんが、みいちゃんのブラウスに戻るまでのお話ですが、裁縫箱の中で出会った他のボタンたちにも、それぞれの“人生”があり、裁縫箱にやってきたいきさつも様々。
母も、古くなった服のボタンを1つ1つ取っては、大きなびんにしまっていましたが、色も形も違うボタンを眺めているだけで、何かわくわくした気持ちになったのを覚えています。また、その中から、私の新しい服や袋物に合うボタンを、母が探してくれて、新たな布の上でボタンが生まれ変わる瞬間も、同じようにわくわくしたものでした。
最初は気づかなかったのですが、そんなことをなつかしく思い出しながら、本を閉じると、まさに、そのようにして生まれ変わったボタンたちの“新しい人生”が、裏表紙の絵に描かれていたのです。不思議ですね、表情はなくとも、どのボタンも笑っているみたいで、とてもしあわせそう。
この冬、日本に帰国した際に、布団の上で、「ぼたんちゃん」を読んでいると、母が、「ばあばも、いっぱいいろんなボタンをとってあるよ」と言って、早速その入れ物を持ってきてくれました。色とりどりの素敵なボタン。娘は、目をきらきらと輝かせながら、好きなボタンを1つずつ選び、小瓶の中に入れました。ばあばから譲り受けた思い出いっぱいの古ボタン。この絵本に出会えたお陰で、母と私と娘の宝石のような時間をもつことができ、これからも、この絵本を開くたびに、日本でのしあわせな思い出が心の中いっぱいに広がることでしょう。「ぼたんちゃん」にも、母にも、心から、ありがとう。