本の表から裏までが鉄条網が張り巡らされています。
何処の国の話なのでしょうか? 鉄条網のこちら側は廃墟、向こう側には住居が見えています。そして、兵士がこちらを監視しています。
前書きを見ると、平和へのメッセージがフォアマンさんの変わらぬテーマだとのこと。何処の国かを特定するよりも、鉄条網の意味と少年の育てた木の意味をしっかり掴めばよいのだと思います。
廃墟の片隅で芽吹いた芽を少年は大切に育てます。育てた木はブドウ。ブドウは鉄条網に絡まり鉄条網を隠して少年たちの遊園地を作ってくれました。
それを向こう側の兵士たちが引き抜いてしまう。
兵士たちには、ブドウよりも鉄条網の方が意味があるのです。
引き抜いて放り置かれた木から、新たな芽吹きがあります。今度は向こう側の少女が育て始めます。こちら側でも新たな芽が出てきて。
両方の木が鉄条網で絡み合いました。平和への願い。それを子どもたちが育てたことにとても大きな意味を感じます。
そして、もう一つの主役はブドウの根の生命力。引き抜かれても枯れることなく地中で根を張って再び芽吹いてきます。ブドウの力強さにも感銘しました。
鉄条網など気にせず、互いの子どもたちが一緒になって丘を目指す最後のシーン。
ここに兵士たちや大人がいないことも、子どもたちに託す未来を象徴させているようにおもいました。
とても感銘深い絵本ですが、簡潔なストーリーの前後に作者のメッセージと、訳者のメッセージがこの絵本への思いを語っています。前書きのフォアマンさんの話は記述しましたが、後書きは訳者の柳田邦夫さんの思いが込められています。
メッセージ性の強い絵本と柳田邦夫さんがそれを選んだという時点で、この本の意味がとても強いと思います。
フォアマンさんの絵本を読んでいこうと思います。
柳田邦夫さんの訳した本を辿っていくと、親として子どもたちに何を伝えれば良いのか、考える参考になると思います。柳田さんの訳本もお薦めです。