少し前まで保育園から毎日のようにどんぐりを持ち帰って来た息子。そんな息子の大好きなどんぐりを、どんぐりの目線から描いた絵本です。
お尻のところに「ケーキ」と刻まれたコウちゃんが特別にしているどんぐり。コウちゃんに投げられたり、かけっこをしたりするのが大好きです。それでも嫌でやめて欲しいと思っている、どんぐりならではの切実な悩みはクスッと笑えます。毎日一緒にいた二人ですが、別れは突然やって来ました。決して望んだことではなく、コウちゃんも「ケーキ」も泣きました。「ケーキ」の声はコウちゃんに届かなくてすごくじれったい思いです。ただ「ケーキ」からはずっとコウちゃんを見守ることができたのは唯一の救いでした。月日は流れ、思いがけなくコウちゃんと再会できたのは、お互いの存在に気づいたのと、コウちゃんの気持ちが「ケーキ」に感じ取れた瞬間でもあり、静かな感動を覚えました。
子供の頃、石ころやどんぐりなど何でもないものに思い入れをして大切にしていたことを思い出しました。きっと息子にも親の知らないところで思い入れをしているのだと思います。大人目線だけで無碍にしないように気をつけてやりたいと思った絵本です。