女の子が山奥で山姥に出会い、人の良い行いで花が咲くという不思議な「花さき山」を見たが、再びに行くことはできなかった…という、割とよくある民話のような体を装っている。
だが、この「花さき山」の凄さは、無慈悲なまでに善行に対して他者が評価を入れてこないところにある。
ともすると我々は「認めてほしい」欲求の罠にはまって、苦しんだり、怒りを抱えたりしがちだが、善行は他者に認められるために行うのではなく、あくまで自分の心に花を咲かすためにするものだということを、花さき山と山姥は静かな美しさをもって伝えてくる。
あやは運よく花さき山に行けたが、本当は誰も花さき山には登ることはできないし、山姥にも会えない。しかしそれでも、「花さき山で、おらの花がさいてるな」という思いを持つ。この教えの尊さには胸が熱くなる。
なんだか自信がないな、と感じた時にこそ読んで欲しい一冊。