親子で神沢利子さんの作品が好きなので、この本も神沢さんの訳とあって、楽しみにページを開きました。主人公のおばあさんも、動物たちも、生き生きと描かれていて、気持ちも晴れやかになるお話でした。ある日、古くなった赤い家から引越しをしようと決めたおばあさんでしたが・・・。最初に見つけた家では、ろばが文句を言い、次の家では牝牛が、その次には猫たちが・・・。さあ、最後はどうなったでしょう。みんなが満足して暮らせる家は見つかったでしょうか?ヤドカリのように家を買い替えるアメリカならではのお話のように思いましたが(実際に、私たちも、ヤドカリ家族です!)、おばあさんは、家を見つけるたびに、「だれもすんでいるひとがいなかったので」、その家に住むことにしました、という何とものどかなお引越しには、うらやましくなってしまいました!娘は、おばあさんが、新しい家へと移るとき、「前の家に住む人を探さずに来ちゃったよ。」と心配し、(そう、1度でも引越しを経験すると、子どもでもちゃんと家の売り買いについての知識を得るんですね!)、また、すねている猫たちには、「そんなに、いやだ、いやだ、ばっかり言ってると、今度引っ越すときは、ここに置いて行かれちゃうよ。」と言っていました。そして、動物たちのセリフをまねて、「こんな家に住むのは、ごめんですよ。だって、〜がないから。」と、1件1件の家をチェックしているのも可笑しかったです。でも、「引越しばかりじゃつまんないよね。」と、最後にはごもっともな意見。私も、家族みんなが幸せに暮らせるって、とてもだいじなことなんだな、と当たり前のことを再認識しました。
【事務局注:このレビューは、「おばあさんのひっこし」こどものとも 1996年3月号に寄せられたものです。】