人はだれでも、思い出の風船をたくさん持っているんですね。
そして、少しずつ少しずつ、風船を飛ばしていく…。
認知症という怖くて悲しい病気を、わかりやすく美しく表現してくれています。
おじいちゃんの飛ばした風船が、ぼくのものになって増えていく。おじいちゃんの思い出の風船は、ぼくのもの…。なんて素敵なことでしょう!
表紙のおじいちゃんの姿に、父を重ねながら、ページをめくり始めました。
ぼーっと椅子に座って過ごす時間が増えてきた父ですが、その表情まで、おじいちゃんとそっくりで、ああ、父もきっと手にたくさんの風船を持ちながら、思い出の海をゆらゆらと漂っているのかなあと思いました。
何度も同じことを繰り返したり、話がかみあわなかったり、記憶がすっぽり抜け落ちてしまったり…。そんな父の姿を見ると、辛かったり腹が立ったり。なかなか冷静に向き合うことができません。そしてそんな自分を責める日も度々…。けれど、こんな素敵な絵本に出会ったあとは、優しく向き合えると思います。そうなんだ。父が風船を飛ばしてしまっても、悲しまなくていいんだ。父の飛ばした風船は、私のものになって増えていくんだ!
なんだか心に温かな風が吹き込み、久しぶりに明るく晴れやかになった気がします。
父との時間を大切に、思い出の風船をひとつでも多く受け止めていきたいと思います。出会えてよかったです。ありがとうございました。