母が亡くなって母のことを考えない日は一日となく、母との思い出の中にやはり父もいます。
この本は、母が亡くなる前から亡くなった後、前後してずっと借りていた本でした。
マサイスというニューイングランドの島に住む少年の一生を描いたものなのですが、
クーニーの絵本らしく、静謐で淡々と物語は進行していきます。
よく絵本を通して死を考える、死を扱った絵本を子どもたちに
ということが言われます。
父と母、二人亡くしてみて思うことは、どんなに絵本が素晴しくとも
死は体験をもってしか、身にしみないのではないのかということです。
それでも、死ということを考える絵本として、真っ先にこれが私に浮かぶのは、
母が亡くなるのと前後して借りていたというだけではありません。
生と死を対極にとらえる考えもあるでしょうけれど、
死は生との陸続きにあるのです。
死が訪れるその瞬間まで、人はどんな形であれ命を燃やし続けて生きているのですから。
そういった意味で、ニューイングランドの一つの島で、一生を終えたマサイスを描いたこの作品は、
私にとっては死を含めた生きることを考える絵本なのです。
クーニーの描く、空の水色、海の青がとても美しい作品でもあります。
素材に忠実に描くことを大事にしていたクーニーなので、この作品についても
丹念な取材を行ったのではないでしょうか。
死を考える時に、必ず生きるということも考えるように思います。
どこまで生きられるのが、寿命というのは誰にもわかりません。
それならば、死が訪れる瞬間まで、自分のためにだけでなく、何か一つでも人のお役に立つことをして
生きていけたらと思うのです。