「ワンダー」「もうひとつのワンダー」に続く本書。
おばあちゃんとの会話を通して、自ら気づきを得て自省した、いじめっ子だったジュリアン。
本作は、そのジュリアンのおばあちゃんサラが、ジュリアンに語った、少女時代の物語。
ナチスの迫害から命がけで逃げたサラ。それは想像を絶する過酷な体験。
人はなぜこんなにも残酷で愚かな生き物なのだろう。ただただ恐ろしさに慄いてしまう。
そんな中でも、優しく尊い人々が大勢いるー。
命をかけて守ってくれたクラスメイトジュリアン。
自らの危険も顧みず、屋根裏部屋にかくまって世話してくれたジュリアンの両親。
恐ろしさの中にも、優しさ、希望が垣間見れ、温かさに満たされる瞬間が沢山ある。
重いテーマの苦しい話のはずなのに、ぐいぐいと引き込まれて、気がついたら夜が開けていた。
ー悪は、善人たちがそれを阻止しようと決めたときにはじめてやめさせることができるー
巻末に詳しい解説があり、ホロコーストについてわかりやすく学ぶことができる本書。
歴史に学び、勇気を持って、声を上げること。希望を捨てず平和を希求すること。
多くの気づきを与えてくれるこの物語を、子どもたちに手渡していかなければと思います。